エグゼクティブサマリー:2025年のタイ不動産市場は複雑な状況に直面しています。住宅価格は緩やかに上昇(年率約2~3%)していますが、国内需要が弱いため、デベロッパーは新規供給を遅らせており、政府は住宅購入者向けのインセンティブを提供しています。バンコクや主要なリゾート地(例:バンコクの2ベッドコンドミニアムの平均売出し価格は約30万3,000ドル、プーケットは約29万6,000ドル)が依然として最も高価な市場ですが、コンドミニアムは過剰供給と販売の伸び悩みに直面しています。商業用不動産は分岐したパフォーマンスを見せています。バンコクのオフィスは新しいグレードAタワーの大量供給により空室率が上昇(2024年上半期で約18.2% bangkokpost.com)、一方で小売モールは観光回復による恩恵を受けています(2025年1Qの一等地小売空室率は約5.2% research.jllapsites.com)。工業・ロジスティクス分野は明るい兆しを見せており、東部経済回廊(EEC)は工場・倉庫への強い需要を牽引しています。外国人投資も活発で、中国、ミャンマー、ロシアの買い手がコンドミニアム購入の大半を占めており、政策立案者は99年リース、高い外国人持分枠などの改革を検討中です khaosodenglish.com。インフラ(EECプロジェクト、交通網拡張)や政策支援(ビザプログラム、減税)が見通しを下支えしています。総じて、2025~2028年の間は価格も販売も数%の緩やかな成長が見込まれ、ミッドマーケット住宅、物流倉庫、観光連動型開発に機会があります。
現状マーケット概要(2025年)
タイ経済の成長は緩やか(2024年末前年比約3.1%増 scmp.com)で、家計債務の高さが国内需要の抑制要因となっています。観光は力強く回復しており(2025年の訪問者数は2019年ピークに迫る)、ホテルの稼働率・宿泊単価を押し上げています。政府は住宅刺激策を継続中で、2024年には財務省が7百万バーツ以下の住宅について物件移転・抵当権設定登記手数料を0.01%に引き下げ、販売減少の歯止めとなりました。2024年末には住宅全体の移転件数はなお前年比4~8%減(35万545件、-4.4%)でしたが、2025年には回復の兆し(REICによると取引は+3.7%増予測)がみられます。外国人によるコンドミニアム購入が引き続き市場を支えており、国内買主は依然慎重な姿勢です。
住宅セグメント
- 都市型住宅(バンコク大都市圏&主要都市): バンコクの住宅市場は成熟し、国内主導型です。2024年第4四半期には価格が緩やかに上昇(戸建て+2.4%、タウンハウス+3.2%YoY globalpropertyguide.com)、一方でコンドミニアムの価格上昇は大幅に減速(2024年第4Qは+2.5%、第3Qは+7.2%)しました globalpropertyguide.com。デベロッパーは新規供給を控え、多くの企業が買手予算に合致する7百万バーツ以下の低価格帯プロジェクトに注力しています。供給過剰が懸念され、バンコクには多くの未販売コンドミニアム在庫が残っていますが、新規供給も続いています(一部プロジェクトは遅延)。バンコクアパートの表面利回りは平均約5~6% globalpropertyguide.comで、小型物件やセカンダリー立地ほど高利回りです。
- リゾート及び地方市場: 観光地は独立したサブマーケットです。プーケットやパタヤ/チョンブリーでは、バンコク市場冷却を背景にデベロッパーがシフトし建設ブームになりました scmp.com。Colliersによると、2024年4Q時点でプーケットには約4,982戸の未販売コンドミニアムがあり(16プロジェクト from scmp.com)、2024年の新規供給は過去最多14,718戸で販売率は64%程度 scmp.com。過剰供給と価格下落圧力が懸念されますが、一等地リゾートのコンドは依然高額で、2ベッドコンド平均価格はプーケットで約29万6,000ドル(バンコクの30万3,000ドルとほぼ同等)、高級観光需要の高さを示します。チェンマイなど他地域はより小規模・緩やかで、コンドミニアムは外国人リタイア層や駐在員を引きつけつつも規模・成長率は控えめです。どのセグメントでも外国人需要(とくにコンドミニアム)は根強いです。2024年前半~3Qに外国人が購入したコンドは11,036戸(前年同期比+3.1%)、国籍別では中国が約39.7%(4,386戸)、次いでミャンマー(9.5%)、ロシア(7.2%)、台湾(5.5%)。外国人取引の約半数が3百万バーツ以下(約9万ドル)で、主に低中価格帯への需要を意味します。主な購入エリアはバンコク(全外国人権移転の38.7%、4,269戸)、チョンブリー/パタヤ(36.0%、3,976戸)、プーケット(748戸)、チェンマイ(698戸)です。
商業用不動産
- オフィス: バンコクのオフィス市場は供給過剰に直面しています。新興グレードAビルへの移転が進む一方、大量供給で全体の空室率が急上昇。CBREとBPによれば2024年上半期のオフィス空室率は約18.2%(2023年末は16.7%)bangkokpost.comで、2024年末には約22%へ上昇する可能性があります bangkokpost.com。2024年後半には約26万平米の新規供給が加わり bangkokpost.com、既存グレードAオフィス賃料も下落気味(CBDグレードA平均賃料は㎡あたり月約900バーツまで低下)bangkokpost.com。ただし、2024年は過去5年で最高の純契約面積増となり、多くの企業が新しい高品質物件に移転しました。今後も供給増が続く中、家主は厳しい状況に。プライム賃料は横ばい~微減の見通しで、企業側はESG認証・テクノロジー対応型オフィスを求める動きが続きます。
- リテール: リテール不動産は観光回復で改善傾向。バンコクの大型モールはインバウンド観光客対策でリニューアルを加速。2025年第1Qの一等地リテール空室率は約5.2%(直近3年で最高)research.jllapsites.com、大型新規施設の開業やテナント入れ替えが要因ですが、賃貸需要は堅調。2025年1Qには国際ブランドとの新規契約が約100件成立し、特に観光地立地のラグジュアリーファッションに集中 research.jllapsites.com。賃料も2025年初に緩やかに上昇(四半期比+1.4%) research.jllapsites.com、コロナ後の急上昇(2022–23年)より大幅に緩やか。今後のリテールパフォーマンスは観光業(特に中国・ロシア)次第で、観光に混乱があればリテールの短期成長には逆風となります research.jllapsites.com。
- ホテル: ホテル市場は好調。2024年はバンコクの観光客増により稼働率・客室単価とも過去最高を記録。政府の93カ国向けビザ免除措置や航空便拡充が訪問者数を2019年レベル直前まで押し上げました。バンコクのRevPARと平均販売価格は2024年に新記録。リゾートホテル(プーケット・パタヤ・チェンマイ)も新規供給増(特にプーケット)ながら恩恵を受けています。2025年もホテル需要と価値は引き続き増加見通しですが、フライトや治安面で不安が生じた場合は高級セグメントの冷却もあり得ます research.jllapsites.com。
工業・物流
工業セグメントは絶好調で、製造業移転やEコマース急成長が主因です。工場/倉庫スペース需要は東部経済回廊(EEC:チョンブリー、ラヨーン、チャチューンサオ)や周辺県に集中。政府の優遇策(工業団地内の土地売却、減税等)が自動車・電子・石油化学の投資を呼び込み、2次部品サプライヤー(即入居工場)にも需要が広がっています。倉庫も好調で、アユタヤ銀行は工業団地の土地販売が2025~2027年に年4~5%(約7,000ライ/年)増の見込みとします。成長要因はグローバル企業のサプライチェーン多様化、EECインフラ(道路、港湾、ハイテクパーク)整備、急拡大するEコマースに伴う最新物流施設需要などです。投資家はテクノロジーサービスや環境認証を装備した「スマート」工業団地開発を進めています。高品質倉庫の賃料も上昇傾向ですが、直近期の動向は地域差があります。全体として工業不動産は高利回りで、タイ不動産市場の突出した成長分野です。
主要な地域と都市
- バンコク首都圏: 国内最大の市場。バンコクは住宅およびオフィススペースの両方で圧倒的な地位を占めています。コンドミニアム価格は緩やかに上昇しているものの、全国で最も高い水準にあります。同市は金融、企業オフィス、ショッピングの中心でもあります。今後のインフラ整備(MRT/BTS拡張、ドンムアン・スワンナプーム空港の拡張)がアクセス性を高めるでしょう。しかし、バンコクの市場は国内経済状況に敏感であり、高い債務と融資制約により住宅需要が引き締められています。まとめると、バンコクは規模と流動性を提供しますが、オフィスやコンドミニアムでは供給過剰と価格上昇の鈍化に直面しています。
- 東部経済回廊(パタヤ/チョンブリーおよびEEC): この沿岸工業地帯は成長エンジンです。チョンブリー/パタヤは主要な住宅・工業拠点となっています。2024年第1~3四半期、外国人へのコンドミニアム販売は全体の36.0%(3,976戸)で、バンコクに次ぐ規模でした。しかし、パタヤ/チョンブリーもコンドミニアムの供給過剰と賃料上昇が課題です。より重要なのは製造業で、EECにはハイテク工場、造船所(サタヒープ)、新空港・エアロトロポリス(U-Tapao空港)計画があります。ここでは企業の移転に伴い地価や工場賃料が上昇し、さらに道路や高速鉄道、第三空港などインフラ拡充も予定されています。EECが長期的に成功すれば、チョンブリーやラヨーンはタイで最も価値ある不動産市場の一つとなる可能性があります。
- プーケットおよび南部(リゾート): プーケットはタイの高級リゾート市場の頂点です。観光回復によりホテル・賃貸収益が上昇していますが、前述の通りコンドミニアム市場は過熱気味です scmp.com。開発業者は依然として外国人リタイア層や休暇用住宅購入者を重視していますが、中国やロシアからの回復が鈍化しているため多くのユニットが売れ残っています。プーケット中心部の価格(2LDKコンドミニアムで約900万~1,000万バーツ)は安定していますが、大きな上昇余地は限られます。他の南部地域(パンガー、クラビ)は小規模市場で、経済は観光に大きく依存しています。将来の成長は国際到着客数やプーケット特区のような経済インセンティブに左右されるでしょう。
- チェンマイおよび北部: チェンマイは教育・文化の中心地であり、リタイア層や外国人駐在員、観光による中程度のコンドミニアムやリゾート需要があります。価格はバンコクよりも大幅に低く、最近はほとんど上昇していません。インフラ事業(空港拡張、バンコクへの東部鉄道連結計画)が長期的な地域発展を後押しする可能性があります。現在のところ、チェンマイは安定した住宅・小売活動が続いていますが、リタイア層向けゲートハウスやブティック型観光開発に商機があります。
価格動向とパフォーマンスデータ
- 住宅価格: 2024年末時点でタイの住宅価格指数は緩やかな上昇を示しています。全国的に一戸建て住宅価格は2024年第4四半期で前年比 +2.55%(実質1.54%)、タウンハウスは+3.53%(実質2.51%)です。首都圏もほぼ同様の上昇(例:一戸建て+2.41%)globalpropertyguide.com。一方でコンドミニアム価格は頭打ち傾向で、2024年第4四半期のバンコクは前年比+2.46%(実質1.45%)globalpropertyguide.com、第3四半期の7.20%から低下しています。エリアによって価格差が大きく、2LDKコンドミニアムはバンコク中心部で約1,100万バーツ(約US$303,000)、プーケット中心部で約1,070万バーツです。郊外市場(ノンタブリー、サムットプラカーン)はバンコクの約3分の1の水準です。2025~26年の業界予測は中程度の価格上昇が見込まれており、住宅建設業者は主に地価インフレに基づき2~5%の上昇を期待しています。
- 取引・販売動向: 2024年の住宅販売は減少し、REICの報告では2024年第3四半期までに登録移転が前年比7~13%減少(特に低層住宅は-12.8%)。一方でコンドミニアム移転は+5.6%と増加し、外国人が下支えしました。移転総額は2024年前半に約8%減少。戸数ベースでは2024年は全国で約350,545戸(前年比-4.4%)と推計。2025年予測は363,600戸(+3.7%)で安定化が見込まれます。世帯債務や融資制限が依然として逆風ですが、手数料減免などの景気刺激策で販売減少に歯止めがかかりつつあります。
- 賃貸利回り: タイの住宅賃貸利回り(総額)は2025年第1四半期で平均約6.2% globalpropertyguide.com。バンコクのコンドミニアムは立地や広さによっておよそ4~6%(小型ユニットの方が高利回り globalpropertyguide.com)。リゾートエリアも稼働率が高ければ同等の利回りを期待できます。賃貸利回りはやや鈍化傾向にあり(2024年第3四半期6.27%→2025年第1四半期6.17%)globalpropertyguide.com、これは価格上昇と一部賃料頭打ちを反映しています。工業用不動産賃料は需要増で上昇傾向、主要物流拠点では年5~10%上昇する例も報告されています。
- 主要指標(表):
地域/セグメント | 指標 | 値/傾向 |
---|---|---|
バンコク(2LDKコンドミニアム・都市型) | 平均希望価格(USD) | $303,209 |
プーケット(2LDKコンドミニアム・リゾート型) | 平均希望価格(USD) | $296,134 |
パタヤ/チョンブリー(2LDKコンドミニアム) | 平均希望価格(USD) | $178,311 |
住宅価格中央値の成長(2024年) | 前年比変化(全国) | +2.5%(一戸建て)、+3.5%(タウンハウス) |
バンコクオフィス空室率(2024上半期) | 空室率 | 18.2%(2023下半期16.7%から上昇) bangkokpost.com |
バンコク主要商業施設空室率(2025年第1四半期) | 空室率 | 5.2%(3年で最高) research.jllapsites.com |
外国人向けコンドミニアム販売(2024年1-9月) | 外国人への販売戸数 | 11,036戸(前年比+3.1%)、全体の約13.3% |
主要外国人購入者シェア(2024年1-9月) | 外国人コンドミニアム販売の国籍比 | 中国39.7%、ミャンマー9.5%、ロシア7.2% |
EEC工業用地販売成長予測 | 新規販売・リース成長 | 年+4~5%(2025~27年) |
政府所有権移転手数料(700万バーツ以下) | 所有権移転・抵当権手数料 | 0.01%に減額(従来2%/1%) |
(データソース:タイ中央銀行(BOT)、REIC、CBRE、JLL、Global Property Guide bangkokpost.com research.jllapsites.com。)
外国人投資・法規制の現状
外国人購入者は従来からタイ不動産市場、特にコンドミニアムや高級住宅で大きな存在感を示しています。現行法では外国人の土地所有は禁止(ただしBOIプロジェクトやタイ法人経由等の例外あり)、コンドミニアムは1棟の49%まで外国人所有を制限しています。土地は基本的に典型的な30年リース利用が一般的です。近年ではFDI誘致のため法政策が緩和傾向にあり、2021年閣議決定では長期居住ビザ(10年)や高額投資外国人への土地所有規制の「緩和」が導入されました。実際には、不動産に25万米ドル以上投資する場合などにより通常以上の権利を取得できる仕組みがあります。
2024年中頃、タイ内閣はさらなる抜本規制緩和の検討を承認―特に土地リース期限の99年への延長及び外国人コンドミニアム持分枠の49%→75%への引き上げ khaosodenglish.comが検討中です。これらはまだ審議段階ですが、投資促進型政策転換の意図を強く示しています。外国人によるコンドミニアム購入シェアは全体の10~13%前後で推移しており、中国人購入者が全体の約40%と圧倒し、近年はミャンマー、ロシア、台湾、西洋圏からの伸びも見られます。ただし海外の地政学的/経済的不安定(例:中国経済減速等)の影響で将来的な外国人需要は変動が予想されます。
また、タイ政府はBOI(投資委員会)経由で外国投資家向け各種優遇策を提供。観光・インフラ・工業団地プロジェクトなどは税制優遇や、場合によっては土地所有の特権が認められることもあります。例えばBOI適用の統合型リゾートや外国ブランド名を冠したコンドミニアム団地等では条件付きで外国人の過半数持分が認められるケースもあります。さらに「タイランドエリートビザ」やデジタルノマド向けの長期滞在プログラム等も導入されており、富裕層リタイア・プロフェッショナルを不動産市場に呼び込む施策が高級物件需要の押し上げに寄与しています。
政府政策・インフラ開発
タイ政府は景気刺激策やインフラ整備を通じて不動産市場を積極的に支援しています:
- 財政・税制刺激策: 購入者向け移転手数料減免に加え、初回住宅取得者向け税額控除の延長やLTV(ローン審査比率)ルールの緩和案も検討中(2025年初時点では全体的なLTV緩和は未実施)。低所得者向け公的住宅支援なども進行中です。目的は内需拡大で、財務省の試算では2024年の手数料減免により年間約7,990億バーツ相当の不動産販売、GDP押し上げ1.6%超の効果が期待されます hlbthai.com。
- ビザ・税制優遇: 前述の通り、タイは長期滞在・所得税優遇付きのスペシャルビザ(国外所得課税免除など)を高所得外国人投資家向けに導入しています。2024年末から2025年にかけてはデジタルノマド等への追加優遇(ビザ拡大など)も検討されており、詳細は今後詰められています。
- インフラ整備: 大規模プロジェクトが不動産市場の構造を変えつつあります。代表例としてはEEC(東部経済回廊、2027年までに1.5兆バーツ投資計画 en.wikipedia.org)が挙げられ、高速道路・高速鉄道・スマートシティ構想などが東部タイに投入されています。バンコク~U-Tapao~ラヨーン間(パタヤ経由)の高速鉄道も計画中で、EECでの連携強化に寄与。バンコク市内交通もMRT新路線やBTS延伸で郊外投資エリアが拡大。空港も拡張中で、ドンムアン・スワンナプーム両空港のターミナル増設、そしてU-Tapao近郊ラヨーンに第三国際空港(エアロトロポリスプロジェクト)が建設中です。これら施策は沿線地価の上昇を促します。
- 経済政策: 幅広い「タイランド4.0」戦略(デジタル化、再生可能エネルギー、バイオテク、等)が高付加価値産業育成と都市イノベーションを通じて不動産市場にも間接的に波及しています。国境や観光拠点へ設けられた経済特区では税制インセンティブも導入。政府は総じて成長志向で、タイを物流・医療・テクノロジーの地域拠点とする方針です――これらはデータセンター、病院、バイオキャンパス等ニッチ不動産需要を喚起します。
今後3~5年の見通しと商機
アナリストや関係当局は、徐々に回復し緩やかな成長がタイ不動産全体で続くと予想しています。主な予測および注目テーマは以下の通りです:
- 住宅用不動産: 売買件数と価格はわずかに上昇。REICは2025年の住宅移転件数が約3.7%増加(約363,600件)すると予測。価格上昇率は1桁台前半が見込まれ、業界のベテランは2025年の年間約2~5%の成長を予想しています(強気シナリオでは最大7%という予測も)。最も回復力があるセグメントは、政府支援の対象となる手頃な価格帯の住宅や、外国人による需要がある資産です。投資家は大幅割引された未完成プロジェクトや経済特区周辺の賃貸住宅にチャンスを見出すかもしれません。
- 商業用不動産: オフィススペースは特に都心の古い物件で引き続き厳しい見通し。2025~26年には空室率がピークに達し、既存ビルの賃料は安定するか、わずかに下落する可能性があります。ただし、好立地にある質の高いタワー物件は価値を維持できるはずです。小売業は観光回復に支えられて堅調推移が期待でき、開発業者は体験重視型ショッピングモールや複合開発への注力が予想されます。地元・地域密着型小売(近隣モール、コンビニ)は国内の所得動向に連動し、都心の高級モールは外国人観光客の影響が大きいです。
- 工業・物流: ここが最も明るい分野です。タイがグローバルサプライチェーンで果たす役割の拡大に伴い、倉庫や工場の需要は増加する見通し。クルンシィ銀行の見立てでは2027年まで工業地売買が年4~5%拡大するとされています。新規物流パークや越境EC向け保税倉庫、未開拓地の工業用地に商機が豊富です。EECやその他の経済特区(例: チェンマイ周辺のノーザン・コリドー)は優遇策を活用可能。投資家はEV製造、医療用品、アグリテック分野の動向に注目すべきです―これらの分野は特定地域で不動産需要を牽引しています。
- 地域別ホットスポット: バンコクやEEC以外でも、新興エリアが好調となる可能性があります。たとえば、東部諸県は重工業だけでなく、ラヨーンのレムチャバン・スマートポートやマプタプット自由貿易区などの計画で物流ハブとしての成長が期待されます。北部ではチェンマイ空港の拡張や鉄道整備(調査中)により、交通インフラ沿線の不動産が活性化する可能性も。特別プロジェクトとして、ミャンマー国境の開城スタイル開発やラオスへの高速鉄道なども将来的に新たな投資エリアを生む可能性がありますが、これらはやや長期的な視点です。
- 外国人・ニッチ市場: 法改正案が可決されれば、外国人によるアクティビティの急増が見込まれます。99年リース法やコンドミニアムの外国人所有枠75%の導入で、コンドミニアムや高級住宅の外国人購入が一気に増えるでしょう。また、タイの高齢化社会を見据えたシニア向け住宅、バンコク大学周辺の学生向け住宅、若いワーキングデジタル層をターゲットにしたコリビングも成長分野です。データセンター分野もすでに拡大中(バンコクやEECで新設)、タイはデジタルハブ化を目指しており、技術インフラ関連不動産も有望な成長分野です。
リスク: 主要な不確定要素としては、引き続き高水準が続く金利(ローンコスト上昇)、家計債務水準、主要投資元国(中国、ロシア)の経済状況が挙げられます。政情変化や地政学的リスクは投資意欲の低下要因になりえます。特にコンドミニアムやホテル分野では供給過剰がリスクで、需要が期待以下の場合、価値が横ばいまたは下落する可能性も。インフラなど政府プロジェクトの完成スピード(遅延)が成長に影響します。
まとめると、2025~2028年のタイ不動産市場は全体としては堅調だが目立った急成長はなく、セクターや地域ごとに明暗が分かれる見込みです。投資家は絞り込みが重要で、防御力が高いのは工業・物流用地や都心コア資産であり、観光や高級コンドミニアムはリスクが高めです。進行中の改革やインフラ整備により徐々に投資環境は改善し、税制や所有規制緩和など新政策が加速すれば再び市場活性化の可能性も。
出典: タイ政府及び業界レポート(REIC、BOT)、CBRE Thailand、JLL、Global Property Guide bangkokpost.com research.jllapsites.com krungsri.com、報道及び市場分析 khaosodenglish.com。