バンコクの2025年不動産市場の概要
2025年のバンコク不動産市場は、回復が混在する状況を反映しています。住宅部門は、ディベロッパーや購入者が資金調達の制約に直面しているため低調であり、新規プロジェクトの立ち上げや販売が限定的です cbre.com。一方、ホスピタリティと小売分野は観光業の回復を背景に反転上昇しており、ホテルの稼働率やショッピングモールの人出はパンデミック前の水準に迫っています cbre.com。オフィス市場は需要の鈍さの中、未曾有の高品質な新規供給が大量に入ってくることで、供給過剰に直面しています cbre.com。全体的に、2025年は多くの分野で「買い手市場」となっており、特に大衆向けコンドミニアムではその傾向が強いです。一方で、超高級物件や好立地プロジェクトは底堅さを見せています。政府は、このセクターを後押しするために(例:税・手数料の減免)経済刺激策を講じるとともに、海外投資を誘致する規制改革も模索しています。以下のセクションでは、物件タイプ別の主要トレンド、地区別の価格動向、主要開発プロジェクト、政策変化、今後3~5年の市場展望について詳述します。
2025年の住宅不動産市場トレンド(バンコク)
需要の低迷と供給過剰:バンコクの住宅市場は成熟していますが、冷え込みが進んでいます。コンドミニアムの供給過剰が顕著な課題であり、2024年第4四半期に9,800戸の新規コンドミニアム供給が急増(前四半期比360%増)したにも関わらず、販売数の伸びは10%未満であり、販売率は約35%と低迷しています austchamthailand.com austchamthailand.com。高水準の在庫と購買力の減退から、ディベロッパーは2025年の新規プロジェクト立ち上げを抑制し、今年はごく一部の新規コンドミニアムプロジェクトのみの見通しです austchamthailand.com。多くの未販売ユニットは割引価格で再販売され、コンドミニアム市場は買い手有利に傾いています austchamthailand.com。さらに、大手企業はバンコクでの新規供給を延期したり、コンドミニアム過剰供給の中で低層住宅や他県(例:プーケット)に注力をシフトするケースも見られます。
内需主導の市場:バンコクの住宅販売を牽引するのは依然としてタイ人の地元買い手です cbre.com。しかし、家計債務や厳格化した与信が需要を抑制しており、住宅ローン却下率は通常15~20%のところ約35%へと急上昇、特に廉価帯住宅でその傾向が強いです globalpropertyguide.com。加えて、平均住宅ローンMRRが2025年初頭で約7.9% globalpropertyguide.comと高金利が続き、多くの若年層や初回購入者は購入を先送りにしています。ディベロッパーは、実際の購買力に合わせて新規供給商品を企画しており、例えば手数料減免の恩恵を受けるTHB 700万バーツ以下のユニットに注力しています globalpropertyguide.com。
低層・高級分野の底堅さ:一方で、ミドル~アッパー価格帯の低層住宅(一戸建てやタウンホーム)は比較的堅調な需要を維持しています。THB 1,000万~4,000万バーツの物件が順調に売れている一方、このセグメントにも競争が激化し、より多くの選択肢やディールが提供される「買い手市場」となっています austchamthailand.com。高級・超高級コンドミニアムセグメント(平米単価20~30万バーツ以上)も明るい材料です。この最上位層の供給は2024年も安定しており(「スーパー・プライム」約6,500戸、「プライム」約7,200戸)、販売率は80%以上で推移、富裕層の強い関心がうかがえます austchamthailand.com austchamthailand.com。プルンチット、チットロム、ラチャダムリ、サトーン、リバーサイド等の有名エリアでは高級プロジェクトが継続的に立ち上げられ、好調な販売を維持しています austchamthailand.com。実際、高級市場は活況で、2023年後半はTHB 7,000万~9,900万バーツの住宅の90%が即座に売れ、アジアの富裕層や外国人投資家による旺盛な需要が浮き彫りとなりました bambooroutes.com。
賃貸市場の活性化:購入を控える層の増加により、コンドミニアムやアパートメントの賃貸市場が活発化しています。バンコクでの外国人駐在員人口は2024年に約7.1%増加 austchamthailand.com、観光回復に伴う雇用増加も賃貸需要を押し上げています。中国、フィリピン、日本からの駐在員が最多層を形成し、都心部の賃貸需要を強く支えています austchamthailand.com。バンコクのプライム住宅賃料も上昇しており、2024年末時点でグレードAアパートメント賃料は前年比約8.8%上昇 globalpropertyguide.com。一部の高級エリアでは新規供給不足と外国人テナントの回帰により、賃料が前年比15~16%上昇しています globalpropertyguide.com。これらの賃貸市場の活況を受け、好立地での投資用コンドミニアム(バイ・トゥ・レット)も再び投資家を惹きつけており、利回り改善を狙う動きが見られます。さらに、観光復活によりバンコクでの短期レンタル市場が急拡大。2024年にはバンコクが世界一の観光都市に(3,240万人の来訪者)、Airbnb予約も急増し、観光客向け物件オーナーの収益を押し上げています bambooroutes.com bambooroutes.com。この短期賃貸で高利回りを得られるため、投資家が増加しています(ただしタイの30日未満レンタルに関する法規制には注意が必要)。
価格動向:バンコク不動産市場全体の価格上昇は緩やかです。タイ中央銀行による首都住宅価格指数では、2024年第4四半期の一戸建て価格は前年比+2.4%増(実質では約+1.4%)、タウンハウスは+3.2%増にとどまっています globalpropertyguide.com。コンドミニアムの価格はほぼ横ばいで、2024年末の年間コンドミニアム価格上昇率はわずか+2.46%(年初の+7.2%から大きく減速)です globalpropertyguide.com。これはディベロッパーが在庫処分のため価格を据え置いていることの表れです globalpropertyguide.com。業界専門家は、2025年も住宅価格の上昇は控えめで2~3%程度と予想しています globalpropertyguide.com。需給ギャップが縮小すれば5~7%の上昇余地があるとやや強気な見方も一部あります globalpropertyguide.com。要約すると、2025年のバイヤーは安定した価格と豊富な物件選択肢、特に中価格帯コンドミニアムで有利な状況となっています。
商業用不動産:オフィスと小売のトレンド
オフィス市場 – 供給過剰下での質への移行: バンコクのオフィスセクターは、供給主導の大規模な変革期にあります。総オフィスストックは、2024年に6.3百万㎡を突破し(例:Supalai Icon Sathornなど)、2025年にはさらに約316,000㎡の新規スペースが追加される見込みです realestateasia.com。この供給の急増は現在の需要増加を大幅に上回り、空室率の上昇や大家間の激しい競争を招いています austchamthailand.com。昨年、利用中のオフィススペースは約2.2%しか成長せず、供給の拡大(4%増)には及ばなかったため、市場は依然として「借主優勢」の状態が続いています austchamthailand.com。企業は選択肢が豊富になり交渉力も増し、多くが新築のグレードAタワー(グリーンビル認証や最新アメニティ付き)に移転し、ハイブリッドワークを採用しながらオフィスの統合・縮小を進めています。この「質への移行」により、古いビルや下位グレードの建物はテナント維持に苦労しています austchamthailand.com。
プレミアムオフィスの月額賃料は2024年にわずかに上昇(約+3.3%)したのみで、ピーク時よりも低い水準です austchamthailand.com。主要CBDエリア(シーロム、サトーン、スクンビット)では、グレードAのオフィスは月額㎡あたり900~1,600バーツ、非CBD(ラマ9世、新CBD周辺)は1,000バーツ未満となっています austchamthailand.com。入居事業者を惹きつけるため、大家は引き続き手厚いインセンティブ(フリーレントや10~25%の割引など)を提供しています austchamthailand.com。新規供給パイプライン:特筆すべきは、今後計画されているオフィスの約60%がバンコク中心部に集中し、象徴的な複合開発を含むことです。たとえばOne Bangkokは、ラマ4世通りの大規模開発で、2024年に最初のオフィスタワーが開業、2025~2026年にかけて複数の高級オフィスタワーが追加されます khaosodenglish.comkhaosodenglish.com。同様に、「Dusit Central Park」も2025年にルンピニー公園向かいにグレードAオフィスタワーを供給予定です。これらのプロジェクトはオフィスの品質基準を引き上げる一方で、市場バランスの回復を遅らせているのも事実。専門家は、バンコクのオフィス供給過剰が吸収されるまでに少なくとも5年かかると予想しており、建設ラッシュが終息する2027年以降にやっと健全な均衡になると見ています austchamthailand.com。その間、既存ビルのオーナーは競争力維持のため、建物の質向上(サステナビリティやテクノロジー導入等)に迫られています austchamthailand.com。
小売 & 複合用途 – ダイナミックな回復: バンコクの小売不動産は、国内消費と国際観光の復活により力強くリバウンドしています。都心部の主要ショッピングモールは、ライフスタイル型目的地として自らを再定義し、富裕な外国人観光客やハイエンドな地元客を惹きつけるためテナント構成を刷新しました cbre.com。2024年には、主要モールの小売売上や来店者数が顕著に回復し、この勢いは2025年も持続する見通しです。開発業者の自信も高まり、新たなモールや小売複合施設の開業が首都圏エリアで続々と進んでいます cbre.com。実際、近年はさまざまなバンコクの地区で近代的な屋内型モールが開業予定です cbre.com。代表例は、One Bangkok(18万㎡の小売GFA予定)やDusit Central Parkの高級商業施設で、いずれも高級小売体験の新しい基準を打ち立てようとしています。
大規模複合開発が大きなトレンドとなっており、これらは小売、娯楽、オフィス、住居・ホテルを一体化。こうした開発(One Bangkok、Dusit Central Park、The Forestias等)は、その利便性や「街中の街」的なライフスタイルが評価され、大きな注目を集めています austchamthailand.com。小売業者は、オフィス・ホテル・住居からの顧客流入という恩恵を受けています。ECが近年成長したとはいえ、バンコク市民のモール文化は依然強く、体験型リテールや飲食が集客の要です。全体的に、トップティアモールの空室率が引き締まる中、主要立地で賃料は横ばい~微増傾向となり(都心人気モールではテナント待ちの状況も報告あり)ます。一方、二次立地ではテナント確保のため柔軟な条件提示が必要です。
ホスピタリティ分野の活況: ホテル・サービスアパート等のホスピタリティ不動産市場も再び活発化しています。タイは2024年に3,550万人の外国人観光客を迎え austchamthailand.com、パンデミック前の水準にほぼ回復しました。バンコクはゲートウェイ都市として2024年末にホテルの稼働率・1室当たり収益が数年来の高水準に達しました cbre.com。2025年も到着者数はさらに増加し、コロナ禍前のピークに迫る見通しです cbre.com。こうした状況下で新規ホテル開業への期待も高まり、例えばOne Bangkok内ではリッツカールトン・バンコクが2024年11月に、アンダーズホテルが2025年開業予定です khaosodenglish.com。全体として、観光主導のホテル・短期滞在物件の盛り上がりが投資家マインドを押し上げ、都心部を中心にホテルへの用途転換や再開発が一層進む可能性があります。
物件タイプ・エリア別主要価格動向
コンドミニアム vs 一戸建て価格動向: 2025年時点での価格成長は、物件種別・エリアにより大きなばらつきがあります。概ね、バンコクの一戸建て、タウンハウスは引き続き穏やかなインフレ(年率1桁台前半)を見せている一方、コンドミニアムは2020~2022年の調整後、伸びが非常に緩やかまたは横ばいとなっています。タイ中央銀行データによると、2024年第4四半期時点のバンコク一戸建て指数は前年比+2.41%、タウンハウス指数は+3.19%でした globalpropertyguide.com。都心コンドミニアム価格の前年比上昇はわずか+2.46%で、インフレ率を辛うじて上回る程度——このセグメントの落ち着きを反映しています globalpropertyguide.com。市場アナリストは、デベロッパーが既存コンドの価格引き上げを控え、代わりに販売促進策で在庫消化を図っていると指摘 globalpropertyguide.com。2025年もコンドミニアムは在庫吸収まで小幅な価格上昇(あっても軽微)にとどまる見通しです globalpropertyguide.com。実際、中堅物件では割引を考慮すると実質下落となる事例も。一方で、戸建て住宅(エンドユーザーファミリー向け)は未販売在庫が少なく、価格も地価の上昇に伴い底堅く推移——特に郊外では新規ゲーテッドコミュニティが人気です globalpropertyguide.com。
ロケーション別価格: バンコクの不動産価値は地区によって大きく異なります。セントラルビジネスディストリクト(CBD)、ルンピニー、スクンビット、シーロム/サトーンなどのエリアでは、土地価格やコンドミニアム価格が最も高騰しています。2024年末現在、CBDにおける新築コンドミニアムの平均販売価格は平方メートルあたり約236,000バーツです。austchamthailand.com。プルエンチット/チットロムやチャオプラヤ川沿いの高級プロジェクトは、特に大型ユニットで富裕層向けの場合、しばしば平方メートル当たり30~35万バーツを超えます。austchamthailand.com。一方、都市鉄道沿線の郊外コンドミニアム(少し離れたエリアでもBTS/MRT駅に近い中価格帯エリア)は、平均して平方メートルあたり約127,000バーツです。austchamthailand.com。さらに、バンコク外縁部(鉄道がまだ充分に整備されていない周辺地域)では、新築コンドミニアム価格が平方メートルあたり約70,000~80,000バーツ、あるいはそれ以下に低下します。austchamthailand.com。こうした格差は、交通網とロケーションが価値を左右することを示しています。BTS/MRT駅直結や流行のダウンタウンにあるプロジェクトは大きなプレミアムが付き、開発途上の郊外エリアでは価格面での競争が激しいのが現状です。
この傾向は賃貸住宅の家賃にも表れています。例えば、バンコク中心部の標準的な2ベッドルーム物件の平均希望家賃は月額USD $1,588(約55,000バーツ)ですが、ノンタブリーやサムットプラカーン(バンコク郊外)の外県では同様の物件がその3分の1ほどで借りられる場合もあります。globalpropertyguide.com。郊外の安価な物件の方が賃貸利回り(グロスで3~4%)はやや高く、都心部の高額資産(概ね3%以下)より高い傾向です。利回りは低めでも、投資家は長期的な資産価値の上昇や流動性を見込んでバンコク中心部を好みます。
注目地区:2025年に特に人気があるのは、パトゥムワン/ルンピニー(CBDの核)、スクンビット中心部(アソーク~トンローエリア)、サトーン、リバーサイドです。これらのエリアは高級コンドミニアムや外国人向け賃貸の需要が強く、新たな高価格帯物件も高い人気を集めています。一方、ラマ9世通りやバンナーなど新興ビジネス地区でもインフラ投資が進み、大型プロジェクト(新オフィス、巨大ショッピングモールなど)により不動産価値が底上げされています。郊外エリアでは新たな都市鉄道の開通が大きな要因です。たとえば2023年開通のMRTイエローライン、ピンクライン(モノレール)は、それぞれラチャダーピセーク~サムローン(イエロー)、ミンブリー~ノンタブリ(ピンク)を結び、沿線の不動産関心を高めました。実際、2024年末時点で新規コンドミニアム供給の45%が都市鉄道沿線の郊外に立地しており、開発業者のトランジット・オリエンテッド・ディベロップメント(TOD)への期待を反映しています。austchamthailand.com。今後も都市鉄道網の拡大に伴い、新規に接続される地区(例:オレンジライン東側、新規パープルライン延伸沿いなど)は地価が上昇し、中心部との価格格差が縮小していくと見込まれています。
同時に、バンコクの地価は最近横ばい傾向です。数年にわたる急激な上昇を経て、地価指数の伸びは市場の停滞を受けてデベロッパーの慎重な用地取得により鈍化しています。bangkokpost.com。2024年末には一部インデックスが微減する場面もあり、大手デベロッパーによる計画延期が地価上昇への圧力を抑えている状況です。bangkokpost.com。それでもバンコク中心部の一等地は極めて希少であり、取引成立時には今なお過去最高水準の価格で売買されています。
主要な新規開発・インフラプロジェクト
2025年のバンコクでは、不動産開発とインフラ整備の両面で大規模投資が続き、今後の市場動向に大きな影響を与えています。
- ワン・バンコク:「タイ史上最大級の統合開発」と謳われるワン・バンコクは、CBD内の41エーカーの敷地に建設される39億米ドル規模の複合プロジェクトです。khaosodenglish.com en.wikipedia.org。2024年10月に正式オープンを迎え、バンコクの将来への自信を象徴しています。khaosodenglish.com。2024~2030年の全体完成時には、グレードAのオフィスタワー5棟、ラグジュアリーホテル(2024年開業のリッツ・カールトン、2025年開業予定のアンダーズ)、高級レジデンス、大規模な商業・文化施設が誕生します。khaosodenglish.com khaosodenglish.com。ラマ4世通り沿いの新たなビジネス中心地を形成し、独自の地域冷却システムやスマートシティテクノロジーなど最新インフラ、MRT直結も特長です。en.wikipedia.org en.wikipedia.org。すでに多くの多国籍企業がオフィスを事前契約。ワン・バンコクの存在が周辺の不動産価値にも影響を与え、バンコク市内に183万m²もの商業スペースが新たに加わります。en.wikipedia.org en.wikipedia.org。
- ドゥシット・セントラルパーク:2025年末完成予定の注目複合開発で、旧ドゥシットタニホテル跡(シーロム-ラマ4世通り角、ルンピニ公園向かい)の地に建設中です。敷地面積23エーカー、延床約44万m²に及び、richmonts.com expatliving.net新たな5つ星ドゥシット・タニホテル、2棟の高級ブランドレジデンスタワー(69階建て・公園ビュー)、グレードAオフィスタワー、ハイエンドショッピングモール、そして11,200m²の「セントラルパーク」空中庭園が一体的に整備されます。expatliving.net expatliving.net。BTSスカイトレイン・MRT両線のサラデーン~シーロム駅直結という交通一体型の設計が特長です。expatliving.net。ドゥシット・インターナショナルとセントラルグループの協業により、伝統的ホスピタリティと現代型リテールを融合。完成後は高級住宅(400戸超)、大規模オフィス・商業供給を創出し、シーロム-サトーン-ラマ4世通り地区をCBDの延長線上としてさらに強化します。
- 交通インフラ:政府による交通整備投資が不動産市場の大きな追い風です。2023~2024年にはピンク・イエローモノレールが開業し、ミンブリー、ラムカムヘン、ラープラオ、サムットプラカーンといった北部・東部郊外へのアクセス性が大幅に高まりました。2025年にはMRTオレンジライン(東西)が進捗し、郊外から都心への交通がさらに便利に。また、パープルライン南延伸でノンタブリからバンコク都心を結ぶ開発も続きます。さらに、タイ・中国高速鉄道(バンコク~ノンカイ:ラオス・中国と連携)や、東部経済回廊経由でウタパオ空港・ラヨーンを結ぶ高速鉄道も着工。これらに加え、チャロンラット高速道路延伸、外環状M9など新たな幹線道路も整備され、バンコクの通勤圏拡大と新興開発エリア創出に寄与する予定です。thailand.go.th thailand.go.th。交通インフラの改善は郊外住宅ブームをもたらし、新線沿線駅周辺には通勤者向けコンドミニアムや複合開発が集積しやすくなります。
- 都市再生・その他:多数の都心区で再開発が進んでいます。新バンスーグランドステーション(クルンテープ・アッピワット中央駅)周辺は、2021年開業のタイ最大級鉄道ハブという立地を活かし、ミックスユース再開発(オフィス・住宅等)による将来の交通結節点への転換が注目されています。クロントーイ港湾用地の再開発や、「バンコクアリーナ」(計画中の大型スポーツイベント施設)の創設などの官民大型プロジェクトも構想段階にあります。さらにバンコク市の都市計画(2022~2023最新版)の改定で、鉄道沿いの高密度・ミックスユース開発やグリーンスペース確保が推進され、市場の総合開発トレンドとも合致しています。
全体として、これらの大型プロジェクトはバンコクの成長への期待を映し出しています。新たな商業ハブの創出、数千戸規模の住宅供給、そしてビジネス拠点の移動や、新商業施設開業による客足分散など需要シフトも予想されます。投資家・関係者にとって、どこで新しいインフラやメガプロジェクトが生まれているかを把握しておくことは、次なる不動産ホットスポットを見極めるうえで重要ポイントです。
不動産に影響を与える政府の政策および規制
財政刺激策: タイ当局は不動産市場の下支えのため、いくつかの支援策を導入しました。注目すべき政策は、譲渡および抵当権設定登記料を0.01%に引き下げ(通常の2%および1%から)するもので、価格が最大700万バーツの住宅を対象としています。globalpropertyguide.com tilleke.com。このインセンティブは中間層の住宅購入者を対象に2024年まで実施されていましたが、2026年半ばまで延長されました。tilleke.com。これにより初期取引費用が大幅に削減され(700万バーツの住宅で最大約14万バーツの節約)、特に手頃な価格帯での住宅譲渡を刺激しました。globalpropertyguide.com ただし、適用されるのは購入者がタイ国籍者の場合のみです。tilleke.com。また、政府は住宅ローン金利に対する税控除の拡大や、低所得者向けの特別住宅ローンプログラムも承認し、住宅取得の負担軽減を図っています。reuters.com これらの施策により、不動産活動が活性化し、2025年のGDP成長に1.8ポイント近く寄与すると期待されています。reuters.com。
金融政策の状況: タイ中央銀行は2024年後半に金融緩和を開始し、一連の利上げの後、2024年10月に政策金利を25ベーシスポイント引き下げて2.25%としました。globalpropertyguide.com 商業銀行の基準住宅ローン金利もわずかに低下し、2025年1月時点で平均MRRは約7.91%(前年の8.05%から低下)。globalpropertyguide.com 依然として高水準ですが、金利の安定化およびわずかな低下により、変動金利型ローンの購入者の負担が幾分緩和されました。中央銀行はまた、数年前に導入されたLTV(ローン・トゥ・バリュー)規制の厳格化を維持しており(現時点で緩和は再度行われていません)、セカンドホーム購入等の高レバレッジ借入を制限し、投機的購入抑制の効果があります。不動産業界からは一時的なLTV規制緩和を求めるロビー活動がありましたが、タイ家計債務の高さを鑑み、当局は金融安定を優先しています。
土地・不動産課税: タイは近年、新たな土地・建物税(2020年施行)を導入し、旧家屋・土地税に代わる制度となりました。この年次税は、用途別(住宅用・商業用・未開発地)で税率が異なる形で不動産所有者に課されます。一定評価額以下の自宅所有者の多くは課税額が小額または免除ですが、高額住宅やセカンドホーム、商業不動産所有者には保有コストが発生しました。2020~2022年はCOVID対策として一時的な減税が行われましたが、2023年からは通常税率に戻っています。このため、投資家やデベロッパーにとっては、土地バンキングや未販売在庫の持ち越しに対するコスト上昇となり、土地の囲い込み抑制や開発・売却の促進要因となりました。土地価格の停滞の一因も、この税コストを意識した選別的な用地取得姿勢によるものです。
開発規制: バンコク市の用途地域(ゾーニング)や建築規制も進化しています。最新の都市計画では、駅近を中心とした複合用途・高密度開発を推進し、公共スペースや駅連絡通路など市民便益を提供する事業には、FAR(延べ床面積率)のボーナスを認めています。これにより新しい創造的なプロジェクトや複合開発が見られる一方、大規模案件には環境・コミュニティ影響評価(EIA/SIA)の審査がより厳格となり、承認に時間を要する場合もあります。加えて、グリーン屋上や省エネ設計といったサステナブル建築促進も官民で進められており、建設コストの上昇要因となる反面、長期的な資産価値向上につながっています。
外国人所有権規制: 最も注目される規制変化は外国人の不動産所有ルール(次節で詳述)に関するものです。総括すると、2024年に政府は外国人購入者向け規制緩和案を再検討しました。これはバンコクの高級分譲マンション市場などに大きな影響を与える動きとして、以下で詳細を述べます。
外国人所有権ルールおよび投資家への影響
これまでタイは外国人の不動産所有を厳しく制限してきましたが、2024~2025年は、より多くの外国資本誘致を目指し大きな転機を迎えています:
- 現行ルール: 外国人はタイで土地を完全所有(フリーホールド)できません(ごくまれな工業用途や複雑なスキームを除く)。ただし、建物全体の49%まで分譲マンション(コンドミニアム)ユニットをフリーホールド所有できます。この49%規制は長年続く特有のルールです。さらに外国人は長期の借地権(通常30年)を得ることができ、この借地権は登記して権利保全もできます(大抵は更新条項付き)。実際、バンコクの外国人投資家の多くは、許容枠内でコンドミニアムを購入したり、30年リースで高級アパートや戸建てを借りるのが一般的で、直接土地購入は認められていません。
- 2024年の規制緩和案: 新政権(スレッタ首相、元デベロッパー出身)は外国人所有規制の自由化に動きました。2024年中盤、内務省は住宅借地期間を30年から最大50~99年へ延長、コンドミニアム外国人所有枠を49%から75%へ拡大する方針の調査に着手。globalpropertyguide.com globalpropertyguide.com 2024年末にはこれらの施策推進が内定し、新規分譲マンションの外国人フリーホールド枠が75%に拡大、住宅借地期限も99年へ延長(実質的に近いフリーホールドとなる)ことに。lundgreensinvestorinsights.com さらに、外国人が一定条件(投資額等)を満たせば住宅用土地を一戸限定でフリーホールド所有できる可能性も示唆されました。reuters.com この案は国内で物議を醸し、過去には反対世論で棚上げされた経緯もありますが、現政権は投資家寄り政策の維持に意欲的です。lundgreensinvestorinsights.com lundgreensinvestorinsights.com
- 影響: これら改革が全面実施されれば、タイは海外投資家にとって大きな魅力となります。コンドミニアムの75%枠なら、デベロッパーは新規プロジェクトの大部分を外国人向けに販売でき、売れ残り在庫の早期消化(バンコクは約1.6兆バーツ相当の住宅在庫)が期待できます。lundgreensinvestorinsights.com lundgreensinvestorinsights.com 99年リースへの延長で、外国人や駐在員は戸建やヴィラの長期保有が可能になり、郊外やリゾート地で高級住宅開発の活性化が見込まれます。政府はこうした方針によって、国内需要の低迷を補うほど外国人需要が高まることを明示的に狙っています。lundgreensinvestorinsights.com lundgreensinvestorinsights.com 実際、外国人購入(中国人主導)はコンドミニアム市場の重要なプレーヤーで、全国のコンド譲渡の約13%を占めます。globalpropertyguide.com バンコクでは2024年1~9月の外国人コンド購入が前年比約6.2%増加し、国内需要の低迷中でも増えています。globalpropertyguide.com 中国はその中で約40%(2024年9ヶ月間でバンコクエリア4,269ユニット)を占め、次いでミャンマー、ロシア、台湾等が続きます。globalpropertyguide.com globalpropertyguide.com 中国経済の先行きを巡る不透明感はあるものの、タイのルール緩和は中国に限らずアジアや欧州等、多様な安定資産・セカンドホーム志向層の呼び込みが期待されます。globalpropertyguide.com globalpropertyguide.com
- リスクと考慮点: 外国人への不動産販売については国内世論が分かれます。2024年の世論調査では、多くのタイ人が外国人の土地所有に不安を抱いていることが示されました。lundgreensinvestorinsights.com 政治的反発や世論の圧力で改革が遅れるリスクもあります。ただし、過去(1997年アジア通貨危機後)には一時的に外国人のコンド100%所有を解禁した例もあり、タイ人の購買活動が阻害された事実はありませんでした。lundgreensinvestorinsights.com 現政権は改革を市場回復・外国資本呼び込み策と位置づけています。投資家は法改正の動向(コンドミニアム法や省令の改訂、外国人戸建所有の最低投資額等の条件)を注視する必要があります。全体的な潮流は規制緩和の方向であり、バンコクの高級コンド・ブランドレジデンス市場などで新たな外国人買い需要の波が起こる可能性があります。旺盛な外国需要が発生すれば都心高級案件の価格上昇圧力となる一方、デベロッパーや売主の流動性向上にも寄与します。
- ビザ・優遇策: 所有規制改革と並行し、タイは富裕層外国人誘致のビザ制度を導入。長期滞在(LTR)ビザは2022年開始で、一定条件を満たせば富裕層・退職者・リモートワーカー等に10年ビザを付与。取得条件にはタイ不動産に最低50万ドル投資するルートもあります。また「タイ・エリートビザ」は長期滞在権を求める不動産購入者に引き続き人気です。こうした外交施策と不動産法改革の組み合わせは、2020年代後半のバンコク不動産需要を大きく左右するゲームチェンジャーとなる可能性があります。
今後3~5年の市場見通し
足元の逆風にもかかわらず、中期的なバンコク不動産市場の見通しは慎重な楽観論が根強く、2026~2028年にかけて段階的な回復が見込まれます。主な予測・要因は以下の通りです。
- 販売量と吸収率: 不動産情報センター(REIC)は2025年に行き詰まりからの回復を予測しています。2024年には全国の住宅取引が約4.4%減少すると見られていますが、2025年には取引件数が+3.7%増加し約363,600戸に達すると予想されています。globalpropertyguide.com この基本シナリオは、政府の刺激策(手数料減額や公共支出)が消費者信頼感を高めることを前提としています。globalpropertyguide.com その後、経済が年間3~4%程度成長することで住宅需要は徐々に回復するはずですが、完全な正常化(2020年以前の販売水準への復帰)には数年かかる可能性があります。コンドミニアムの供給過剰のため2025~2026年は新規プロジェクトの発売が控えめで推移する見込みで、デベロッパーは積極的な拡大よりも在庫処分を優先しています。austchamthailand.com 2026~2027年までに未販売在庫が減少し、家計所得が改善すれば、調査の行き届いた立地やニッチ分野に焦点をあてた新たなプロジェクト・サイクルが始まる可能性があります。
- 価格: 住宅価格は当面は緩やかな上昇にとどまる見通しです。コンセンサス予測では、バンコクの住宅・コンドミニアム価格は2025年と2026年に年率1桁前半の上昇が見込まれています。globalpropertyguide.com 地価次第の部分が多く、デベロッパーがユニット価格を大幅に引き上げるのは土地・建設コストが上昇しない限り考えにくいでしょう。特定のセグメントでは好調が継続する可能性もあります。例えば高級コンドミニアム部門は(需要が旺盛で新規供給が少ないため)さらなる価格上昇が続き、新たな交通インフラ近隣の物件も路線開通後は平均を上回る価格上昇が見込まれます。一方で、供給過剰な郊外の旧型コンドミニアムは、新築プロモーションと競合して価格が横ばいまたは微減する場合があります。
- オフィス・商業用: オフィス部門は今後数年間、テナントに有利な市場が続くでしょう。2024年後半から2026年にかけてオフィス新規供給は117万㎡超が見込まれ、realestateasia.com 、バンコクのオフィス空室率は上昇し、賃料は抑制されるでしょう。市場関係者は、オフィス市場の本格回復は2027~2028年と予想し、供給増加が収束した後が本格的な回復期になります。austchamthailand.com それまでの間、再編や用途転換(老朽ビルのリノベーションやホテル・住宅への転用等)が進むことも考えられます。商業用不動産の見通しは消費と観光の動向次第です。観光が順調に回復すれば(=バンコクの小売・ホテル需要も好調)、一等地の小売資産は好業績が期待でき、モールでの賃料上昇余地もあります。二次的・差別化の薄いモールはECや過剰供給で逆風が続くでしょう。ホスピタリティ部門は、直近(2025~2026年)は旅行需要復活で強気ですが、特に5つ星カテゴリーで新規ホテル供給が増えるため、オーナーは価格・品質面での競争力維持が必要です。
- マクロ経済の不確定要素: いくつかのリスクが今後の見通しを左右する可能性があります。家計債務の高さ(GDP比約90%)と生活費上昇が国内購買力を抑えています。globalpropertyguide.com lundgreensinvestorinsights.com 世界的な金利高止まりやタイの銀行による厳格な融資姿勢が続けば、回復局面が長引く恐れもあります。また、中国の経済情勢も外部要因として重要です。中国人バイヤーは外国人需要の大きな部分を占めており、中国経済が長期低迷したり資本規制が強化されると、バンコクのコンド市場がさらに弱含む可能性もあります(2024年時点で既に中国人バイヤーはやや鈍化)。globalpropertyguide.com 一方、政府の政策が予想を上回って効果を発揮する(例: 外国人の所有規制緩和と積極的な海外誘致)場合は、外国投資の顕著な流入となり、市場回復が前倒しされる可能性があります。
- 投資家マインド: 不動産デベロッパーおよび投資家の信頼感は徐々に回復しています。タイ証券取引所の不動産指数は2023~2024年に下落しましたが、安定の兆しも見られます。一部のデベロッパーは、収益源を多様化(例えばEECや製造業FDIの追い風で産業用・物流へ進出)austchamthailand.com austchamthailand.com。 産業用地販売や物流倉庫需要は根強く、デベロッパーには新たな成長機会です。 3~5年の期間ではバンコク経済と観光の完全正常化、およびASEAN域内成長に伴い不動産市場の改善が見込まれています。2027年までにバンコクの不動産市場は需給バランスが整い、都市化・インフラ改善が続けば、より強固な基盤となるでしょう。
予測サマリー: 基本シナリオでは、2025年以降の住宅セクターは取引件数の緩やかな増加と段階的な価格上昇(年率3~5%)が見込まれ、中価格帯コンドミニアムの過剰在庫も2026~27年には徐々に解消される見込みです。高級セグメントが回復を牽引し(価格・販売速度双方で)、大量市場住宅は債務累積の影響でやや遅れる可能性があります。オフィス空室率は2025~26年をピークに、供給減少と共に賃料も2027年から再上昇が期待されます。小売・ホスピタリティ分野も経済・観光の成長に合わせて安定した拡大が続くでしょう。バンコクは根本的に魅力的な大都市で(香港やシンガポールなど地域の中核都市と比べて価格競争力がある)、短期的な過剰の解消後は中期見通しも明るいといえます。
ステークホルダーのための機会とリスク
住宅購入者
- 機会: 2025年は実需層にとって買い手市場です。特にコンドミニアムの選択肢は豊富で、家具サービスや値引き、頭金減額などの条件交渉も可能です。デベロッパーは一部在庫を現金化するために「在庫一掃売り」を行っており、lundgreensinvestorinsights.com 、掘り出し物価格での購入も可能です。さらに政府の手数料免除(譲渡手数料0.01%)により該当物件の購入時コストも低下。tilleke.com 住宅ローン金利もピークを過ぎ、若干低下してきており、昨年よりも取得しやすくなっています。globalpropertyguide.com タイ国籍者向けには初めての住宅購入を後押しする各種優遇(税控除・ローン補助)も用意されています。reuters.com また、将来的に外国人の所有緩和が実現した場合、将来の資産価値上昇も期待でき、今のうちに購入すればその恩恵も受けられる可能性があります。
- リスク: 資金調達の壁は依然として高く、銀行の審査基準は厳格です。特に負債の多い若年層など、多くの買い手がローン承認につまずいています。globalpropertyguide.com そのため、借入できず賃貸暮らしが続く場合も。経済不透明感も懸念材料で、景気・雇用が鈍化すると、一部地域では値上がりせず横ばい・下落の恐れもあり、即座なキャピタルゲインは保証されません。また、金利はピークより低下したとはいえ、ここ数年よりはまだ高めで、ローン支払い負担は相応に大きいです。今後金利が大きく下がらない可能性も視野に入れ、慎重な資金計画が重要です。供給過剰リスクも無視できず、とくに郊外の中間価格コンドミニアムなど一部で数年間価格が上がらないか、ソフトな市場では短期間での再販さえ難しいケースもあります。したがって、品質と立地重視で、交通至便や生活利便性の高い立地・良質住宅を選ぶことが長期的な価値維持に繋がります。最後に新規供給は小型ユニット中心傾向が強まっているため、広さ重視や特殊な間取りを求める家族には選択肢が限られ、そうした物件は割高になる場合もあります。
賃貸者
- 機会: 現在のバンコク賃貸市場は物件選択肢が豊富で、多くのセグメントで借主優位な状況です。コンドミニアムの供給過剰で貸し出し物件が増え、家賃も競争的(特に中価格帯)に抑えられています。借り手なら条件交渉次第で、場所や広さをアップグレードしても家賃の増加は小幅で済む場合も。オーナーはテナント確保のためにディスカウントや特典(無料Wi-Fi、清掃サービス、短期契約可等)を付ける傾向です。新規交通インフラ開通で、従来未開発のエリアにも快適な物件が見つかりやすくなり、通勤が便利で広めや低家賃の部屋も選択肢となります。外国人駐在員にとっても今は家賃予算が数年前より伸び、高品質・設備充実の物件に手が届きやすい状況です。要するに、2025年は「借り手市場」(最上級物件は除く)が続きます。
- リスク: 全体的に割安物件が多いものの、一部エリアでは逆に競争が激化しています。中心部(スクンビット、シーロム/サトーン等)の主要外国人居住区では、プロフェッショナル復帰に伴い家賃上昇が見られます。globalpropertyguide.com とくに家族向け大型ユニット(都心3LDK等)は物件取り合いで家賃高騰や選択肢減少リスクも。さらに短期賃貸(Airbnb型)の合法性リスクもあります。多くの非ホテル物件は30日以上の賃貸契約が必要とされ、当局の取り締まりによる供給減の可能性も。今後景気回復とともに持ち家志向や観光従事者流入が進むと、賃貸需要は強まり、借り手優位は数年で消失する可能性も考えられます。また、生活の質リスクも要注意。家賃が安い旧型コンドミニアムはメンテナンス・設備面で課題がある場合も多く、現地見学や管理状態の確認は不可欠です。さらに、光熱費(電気・水道)や通勤費はバンコクの生活コストを大きく左右するため、賃料だけでなく総生活費で物件を選ぶ必要があります。
不動産投資家
- 機会: 投資家(賃貸運用・転売狙い)は今のバンコクで割安な参入が可能です。数年価格停滞を経て、バンコク物件は地域中核都市と比べ割安感が強く、市場正常化に応じた上昇余地もあります。特に賃貸利回りは好転傾向で、中価格帯コンドミニアムなら長期貸しで4~5%の表面利回り、観光回復もあり短期貸し最適化でさらに高利回りも狙えます。bambooroutes.com 観光都市バンコクの地位やAirbnb等の人気を生かし、外国人所有規制緩和前の投資で将来の需要増(キャピタルゲイン)にも備えられます。bambooroutes.com バーツ為替も比較的安定しており、為替下落なら今の投資がより割安、為替益も見込めます。政府による新たな支援(物件担保ローンや政府参加型ファンド等)も流動性増に寄与しそうです。リスク許容度の高い投資家は、不良資産・一括在庫売却に参入する好機でもあり、経営難デベロッパーがまとめて戸建・土地を割安放出、回復期まで保有する戦略も可能です。
- リスク: 最大のリスクは回復が期待より遅れることです。投資物件の保有コスト強>が長期化し、管理費・固定資産税・ローン利息を価格が上昇しない間は負担し続ける必要があります。賃貸利回りも経費差引きでは高くなく、例えば実質3%ならローン利息を全額カバーできない場合もありレバレッジには注意が必要です。規制リスクもあります。今は政府が外国人優遇ですが、将来的に方針が変わる可能性(長期保有では軽視できません)が無視できません。またバンコク市場は細分化されており、「外した」立地(例えば供給過剰郊外コンドミニアム)を購入すると流動性低下・低収益の恐れも。逆に好立地物件を選べば大きく異なる結果に。新規供給との競合にも注意が必要で、購入エリアで今後1~2年多数新築が控えている場合、売却・賃貸の価格競争力が落ちます。さらに外国人投資家の場合、口座開設や国外資金導入、外国人枠取得など法的手続きが複雑なため、事前の十分な下調べが大切です。換金時は必ず外貨送金で購入する必要があり、細かな法規にも留意。全体として3~5年の長期運用・資産の目利き力が今のバンコク市場で問われ、短期投機での成功は難しい時期といえます。
デベロッパー・不動産ビジネス
- 機会: デベロッパー・不動産会社にとって厳しい市場にも好機があり、それは差別化とイノベーションのタイミング強>であることです。需要のあるセグメントに軸足を移したデベロッパーが成功を収めます。具体的にはEECや製造業FDIによる産業不動産強>(倉庫・工場等)の成長が顕著で、住宅系から工業団地へ事業転換する事例も増えています。austchamthailand.com austchamthailand.com 住宅も低層住宅やニッチ市場強>(シニア向け、コリビング等)への特化が未開拓需要を捉えます。高級分野は依然として高収益。外国人志向の高級コンドミニアムは高いマージンと高い成約率(発売時80%以上)を維持しています。austchamthailand.com austchamthailand.com 政府の手数料減額などは販売取引の障壁を減らす追い風となっており、外国人購入者増を見越した商品企画・プロジェクト展開(中国人向け仕様等)も進みます。ジョイントベンチャー・業界再編も活発化し、弱い企業は強い企業(日本・中国等の外資含む)と提携してリスク分散や新規資本を獲得する流れです。この時期に資本力ある企業が、土地や distressedプロジェクトを割安取得できるチャンスにもなります。建設費もパンデミック期の高騰を経てやや安定し、2025~2026年の新規計画の採算性向上につながっています。
- リスク: 多くのデベロッパーは財務的な圧迫強>を受けており、未販売在庫と高い債務が重荷です。タイのデベロッパー全体では2025年に数百億バーツ規模の社債償還期限を抱えており、特にコンドミニアム系デベロッパーは巨額債務(上場企業だけで合計THB 800億との報道も)を抱えているため、販売が伸びなければ格付け低下やデフォルトリスクも。bangkokpost.com 国内の購買層も経済減速・家計債務の影響で薄いため、期待通り売れないプロジェクトのリスクも大きい。そのため多くの企業が発売延期や中止を余儀なくされています(新規発売は鈍化し、需要回復明確化まで供給抑制が続く)。austchamthailand.com 入力コスト(建材・労働費等)はピーク時より安定も、パンデミック前と比べれば依然高く、建設技能者の不足も引き続き課題です。政策リスクも重要で、ゾーニングや建築基準の変更によって開発可能内容が変わる場合(例: 新環境規制に伴う高層建築制限や駐車場追加義務化等)も。さらに、2026年以降、政府インセンティブが終了すれば買い手関心が一時的に落ちる可能性もあります。コンドミニアム中心デベロッパーは、値引き合戦に伴うブランド毀損や採算悪化、逆に値引きを抑えれば販売停滞というジレンマにも直面します。そしてレピュテーションリスクも大きく、今の買い手は情報感度が高く、プロジェクト遅延や財務不安があれば販売が落ちるため、企業は進捗アピールや財務健全性をしっかり示す必要があります。
まとめ: バンコクの2025年不動産市場は慎重な楽観論が漂う状況です。各ステークホルダー(住宅取得希望者、賃貸オーナー、投資家、デベロッパー)はそれぞれ異なる課題(資金調達、市場賃料調整、回復タイミング、戦略再考)に直面していますが、同時に独自の機会も存在します。バンコクの都市基盤(人口増、インフラ改善、戦略的立地)は堅調であり、現状に柔軟に適応し将来を見据えた戦略を持つ者が、市場完全回復時に先行利益を享受できるはずです。今後数年は、慎重でリサーチに基づく意思決定と、官民連携による持続的成長への努力が報われる局面となるでしょう。
出典: CBREタイランドによる最新の市場調査およびニュース分析 cbre.com cbre.com、ナイトフランク・タイランド austchamthailand.com austchamthailand.com、タイ中央銀行およびREIC globalpropertyguide.com globalpropertyguide.com、バンコクポストおよびロイター通信のニュース報道 reuters.com lundgreensinvestorinsights.com、および本文中で引用したその他業界出版物。