2025年の住宅不動産トレンド
2025年の住宅価格と販売状況
2025年のワシントンD.C.の住宅市場は、穏やかな価格変動と、近年の熱狂からよりバランスの取れた動態への移行が見られます。都市全体の中央値売却価格は71万ドル前後(2025年5月時点)で、前年比約3%上昇しています redfin.com。この控えめな値上がり幅は、数年間にわたる急激な上昇に続くもので、やや需要が冷え込んでいることを反映しています。実際、売却戸数は減少しており(5月は571件、前年比−17.6%)redfin.com、物件が市場に出ている期間も長くなっています—中央値は46日で、前年の37日から増加しましたredfin.com。買い手はより慎重かつ価格に敏感になっており、これは2021〜2022年の売り手市場の加熱状態から、2025年にはより正常なペースへ移行していることを示しています。
在庫数は増加傾向にあり、買い手にとっては余裕が出ています。2025年初頭には、DCで売り出されている住宅数が前年から大幅に増加し—Realtor.com のデータでは、2024年同週比でアクティブリスティング数が+56%となっていますhousebeautiful.com。月ごとの新規リスティングも、3月は前年比約19%増で急増し、ここ数年で最大規模の在庫数の伸びとなりましたwtop.com。この供給増加は長いリスティング不足の反動であり、価格上昇圧力がやや緩和されています。実際、売り手側も小さな譲歩を始めています:3月のDCメトロ圏の中央値リスティング価格は62万5,000ドル(前年比4.2%増)で、2023年末以降で最も緩やかな価格上昇率ですwtop.com。値下げもやや増加しており(リスティング全体の約28.6%が値下げ、前年からやや増加)redfin.com、売り手が期待値を調整している様子が伺えます。ただし、供給が増えたとはいえ、全体の在庫量は依然として過去水準よりは低く—2か月未満分であり、バランスの取れた市場である4〜6か月には届きませんwtop.com。つまり、DCは供給過剰ではなくバランスに向かって進行中:適正価格の住宅には依然として複数のオファーが付き早期に売却されますが、高値のリスティングは売れ残る傾向が強まっています。
市場の動向はセグメントごとに異なります。人気エリアの一戸建ては依然として非常に需要が高く、一部では力強い値上がりが見られます。例えば、ノースウエストDCの高級住宅地では、一戸建ての価格が急上昇—ある郵便番号(Cathedral Heights/AU Park)では中央値価格が179万ドルに達し、28%の前年比上昇ですwashingtonpost.com。一方で、コンドミニアム市場は軟化:複数の地域でコンドミニアム価格がこの1年で8〜10%下落していますwashingtonpost.com。アナコスティア(20020)やコングレスハイツ(20032)など南東・北東DCの入門向けコンドミニアムは、供給が需要を上回るサブマーケットで価値が下落していますwashingtonpost.com。この分化はポスト・パンデミックの志向を反映しており、買い手は広い住宅や優良立地にプレミアムを支払う一方、中心部以外の小型コンドミニアムは価格抵抗が強い傾向です。全体としてDCの住宅所有者は平均で緩やかな資産価値増を経験(2025年初頭時点の一戸建て12か月平均売却価格は前年比+2.6%)ora-cfo.dc.govしましたが、以前の二桁上昇と比べて、2025年の値上がりは遥かに穏やかです。
賃貸市場のトレンド
ワシントンDCの居住用賃貸市場は堅調を維持していますが、ここ数年の急激な家賃上昇を経て2025年には横ばいとなっています。2025年半ば時点、都市全体の月額中央値家賃(全物件種別)は2,465ドル程度ですzumper.com。これは全米平均より約23%高く、DCが米国有数の高額賃貸市場であることを示しますzumper.com。注目すべきは、この1年で家賃が横ばいまたはわずかに下落していることで、Zumperの2025年6月データによれば前年比1%減となっていますzumper.com。つまり、賃借人は家賃高騰後にやや安堵できる状況で、市場は安定化しています。在庫増加が一因であり、都市では新規アパート供給が着実に続き、多世帯住宅の在庫が前年比約3.2%拡大していますora-cfo.dc.gov。これらの多くはNavy Yard、NoMa、Southwest Waterfrontなどの高級物件で、上位層の賃借人競争が激化しました。実際、家主による譲歩(例:1か月家賃無料提供)付きリスティング割合は上昇傾向で、大家側も入居率維持に努めています。
それでもDCでの賃貸は決して安くありません。一般的な1ベッドルームアパートは月額2,300ドル超、2ベッドルームは平均3,150〜3,200ドルですzumper.comzumper.com。高級エリアではさらに高く、たとえば新しいウォーターフロント地区Navy Yardの1ベッドルームの平均家賃は2,700ドル程度theluxuryplaybook.com、高級住宅街ジョージタウンでは中央値3,000ドル超となっていますniche.com。対照的に、アナコスティア川東側の伝統的な手頃なエリアでは家賃が低く、Historic Anacostiaの中央値家賃は1,272ドルで、市全体中央値の半額以下ですniche.com。(表1でエリア別家賃比較を参照)こうした格差からも、DCのエリアごとに大きく違う賃貸市場状況がわかります—若年層や富裕層向け高級賃貸住宅の需要が北西部やダウンタウンで価格を押し上げる一方、中心部から離れた地域ではより手頃な賃貸価格となっています。
直近の軟調傾向はあるものの、賃貸需要は根強く堅調です。DC世帯の57%以上が賃貸住まいzumper.comで、この比率は全米トップクラス。これは学生人口や流動的な若年労働力、住宅購入の難しさから支えられています。専門管理の集合住宅の入居率も健全(業界レポートによると90%台前半〜半ば)、大家の譲歩も小幅にとどまっています。さらに、最高クラスの物件では大家側が価格決定力を取り戻し、「トロフィー」クラスA+物件の募集家賃は引き続き上昇(最も設備が整った建物では前年比約8〜9%の上昇)cbre.comとなっています。新しい設備・サービスに対し追加料金を払う「フライト・トゥ・クオリティ(質への逃避)」現象が続いています。一方、古いクラスB/C物件や小規模ビルのユニットは、新規供給の多い地域で特に圧力が強く、家賃上昇も鈍化しています。
政策要因も賃貸市場に影響しています。ワシントンDCには古い建物向けの長年の家賃安定化法があり、年間家賃上昇率を抑えています(直近の法改正で消費者物価指数(CPI)+2%、最大10%までに制限)wtop.com。これは多くの賃借人の家賃急騰を防ぐ一方、家主側の収益成長は鈍化し、その物件への投資意欲が薄れる可能性もあります。2025年には、「賃貸住宅法」改正に向けた議論も進み、パンデミック中長期化した立ち退き手続きの迅速化や、手頃な家賃物件の維持促進が課題となっていますfoxessellfaster.com。家主側はこうした政策動向を注視しており、立ち退き手続きの緩和で家賃滞納リスクが下がる一方、借主保護強化や賃上げ規制継続は今後の家賃上昇を圧迫し得ます。全体的に2025年の賃貸市場見通しは安定的であり、2022年の極端な賃貸難状態と比べ賃借人の交渉力もやや向上しているとはいえ、依然としてDCの賃貸住宅は高額です。2026年以降の新規アパートプロジェクトが減少する見込みのため、人口や雇用が拡大し続ければ数年以内に再び家主側に価格決定力が戻る可能性も専門家は指摘していますjpmorgan.com。
住宅供給と新規開発
長年の供給不足を経て、DCの住宅在庫はようやく増加しています——ただし、すべての地域で均等に増えているわけではありません。前述の通り、2025年にはアクティブリストが大幅に増加しており、これは多くの住宅所有者が売却を決断した結果です(値上がりや、ある人々にとっては転職や超低金利融資の終了に動機づけられた可能性があります)。ハウスビルダーも活発で、キャピトルリバーフロント/ネイビーヤードやショーなどのエリアでは多数のコンドミニアムやタウンホームプロジェクトが引き渡されました。リスト数の増加は“2022年4月の水準を上回った”と2025年春にfoxessellfaster.comで伝えられ、溜まっていた売り手のバックログが解消しつつあることを示しています。しかし、パンデミック前と比較すれば依然として供給は制約されており、Bright MLSの試算では2024年年末時点の在庫は依然として健全な水準より36%下回っています(2024年初めの53%下回っていた時よりは改善していますが)washingtonpost.com。総じて、供給は改善しつつあるが、歴史的に見ると依然タイトな状態です。
一つ懸念される動きは、手ごろな価格の住宅セクターにあります。2025年、ワシントンDCの所得制限付きアフォーダブル住宅の供給は危機的状況に直面しています。建設コストの急騰とパンデミック時の家賃滞納が重なり、新規アフォーダブル住宅の資金調達が困難になっていますwashingtonpost.com washingtonpost.com。街の中核となる住宅生産信託基金は、多くのアフォーダブル物件への資金供給を担ってきましたが、既存の困難な物件の救済に資金を振り向けざるを得ず、新規建設への投資を控えると発表しましたwashingtonpost.com。結果、今後数年間ほとんど新しいアフォーダブル住宅の着工がなく、開発業者は2026年には著しい「落ち込み、2027年にはさらに急激な落ち込み」があると予測していますwashingtonpost.com。これは、金利の上昇、補助金の期限切れ、立ち退き猶予の影響が重なった「パーフェクトストーム」と言えます(多くのアフォーダブル住宅の運営者が前例のない未払い家賃を抱えていますwashingtonpost.com)。この影響は深刻で、新規供給がなければ低所得層の賃貸者はさらに激しい競争と移転の可能性に直面します。一部の既存アフォーダブル住宅は収入不足で差し押さえのリスクがあり、もしマーケットレートに転用されれば永続的にアフォーダブルの在庫が失われる危険もありますwashingtonpost.com washingtonpost.com。より広い市場においても、これは(市場レート物件への需要溢れとして)中〜低価格帯賃貸価格への圧力継続や、住宅における社会経済的な階層化の進行を意味するでしょう。
一方、高級および市場価格帯の開発はDCの一部で今も続いています。ネイビーヤード、ノーマ、スウィートウェストウォーターフロントといったエリアでは、この10年ほど建設ブームが見られました。しかし2025年までには、多くの高級開発業者でさえ資金調達コストの上昇(7%近い金利で新規プロジェクトの採算が困難)でやや足踏みしています。新築アパートの供給は2025年に約6,000戸、2026年は約4,000戸に減少する見通しですjpmorgan.com。この新規供給の鈍化は、供給過剰の防止により市場を好転させ、需要とのバランス回復に寄与する可能性があります。一方、行政は住宅不足と空室オフィスという二重問題の解消策として積極的な転用プロジェクト誘致に取り組んでいます(詳細は商業部門で述べます)。バウザー市長の政権は「ダウンタウン住宅化」イニシアティブを開始し、老朽化オフィスビルの住宅用途への転用にインセンティブを設け、2028年までにダウンタウン居住者を15,000人増加させる狙いですdmped.dc.gov。実現すれば、こうした転用はダウンタウン中心部(特に賃貸アパートメント)の在庫増大をもたらし、他の地区への圧力緩和や、商業地区の活性化につながるでしょう。
供給の総括:売出し物件の在庫はついに増加し、買い手の選択肢は広がっていますが、DCは依然として長期的な住宅不足、特にアフォーダブル物件不足に直面しています。新規建設も経済的逆風で減速中です。したがって、経済の失速がなければ、住宅需要は今後も供給を上回り、今後数年にわたり価格も家賃も緩やかではあれ上昇傾向が続くと考えられます。購入希望者や投資家は、DCの厳しいゾーニング規制と限られた土地が迅速な住宅ストック増加を難しくしていることも念頭に置く必要があります。住宅推進政策が進んでも、供給増加は段階的で、売買/賃貸市場の競争性は一定程度維持される見込みです。
2025年の商業用不動産動向
オフィスマーケット:高い空室率と近代化の推進
2025年のワシントン商業用不動産の最大の話題は、オフィス部門の深い変化です。都心のオフィスマーケットは、リモート/ハイブリッド勤務への移行や連邦政府の縮小によって史上最高の空室率に苦しんでいます。2025年第1四半期、地区全体のオフィス空室率は約22.6%に達しましたcbre.com——これは歴史的にも驚くべき数字で、数年前の15%〜16%から大きく上昇しています。2025年初頭の小幅な上昇(前四半期比0.1ポイント)は、主に連邦機関の縮小によるものでしたcbre.com。例えば、米国グローバルメディア局は自社ビルを離れて小規模な賃貸スペースへ移転、USAIDも一時的な予算凍結でオフィス業務を停止しましたcbre.com。こうした連邦政府の動きは大きな影響を与えます:連邦政府(及び関連の請負業者)はDC都市圏オフィス在庫の約30%を占めていますmarcusmillichap.com。機関の統合やテレワーク定着で、地区の総利用面積は純減を続けています。企業側も同様で、余剰スペースのサブリースや、より小規模で高品質なオフィス移転の動きが目立ちます。
さらに新しい設備・サービスの充実したオフィスビルと、古く時代遅れの物件との間で大きなパフォーマンス格差が生じています。最新の「トロフィー」オフィスは高調子で、最高級物件(2010年以降竣工が多い)の空室率は約12〜14%と、市場平均を大きく下回っていますcbre.com。先端HVACやコラボ空間、一等地などの条件を持つ人気ビルはテナントを集めており、実際、テナントはこうした質の高い物件への「フライト・トゥ・クオリティ(質への逃避)」を起こして、古い在庫を放置しています。トロフィー/A+クラス・オフィスのオーナーは高級セグメントで賃料の上昇さえ経験しており、一流スペースの実賃料は2025年第1四半期時点で約9%の対前年上昇ですcbre.com。テナントへの改修パッケージや家賃フリーピリオドといった優遇措置も、最上位物件では徐々に縮小傾向です。例として、大手法律事務所が15.1万平方フィートの事前リースを行い、新築トロフィーオフィス(725 12th Street NW)着工を後押ししましたcbre.com。これらの活況は、質の高いワークスペースがDCで今も重宝されていること(特に一部企業で出社を促す動き)が背景にあることを示します。
一方、古いB・Cクラスのオフィスビル(特に旧式レイアウトや地下鉄駅から遠い物件)は、存続の危機に直面しています。多くが空室率20%超を抱え、中にはほぼ空のビルもあります。新規オフィス建設もほぼストップしている(デベロッパーが投機的オフィス新築を控えている)状況で、市場の注目はリパーパス(用途転換)に移っています。市は「オフィス→住宅」転換の税控除プログラム(通称「オフィス・トゥ・エニシング」)を導入し、オーナーが老朽オフィスを住宅やホテル、他用途に転換するよう促していますbizjournals.com。この制度では15年の固定資産税凍結を含む経済的インセンティブを提供し、200万~250万平方フィートの遊休オフィススペース転換を目指していますbizjournals.com。2025年夏までに、15番街の1980年代オフィスの住宅化など、いくつかのパイロット転換が進行中ですwtop.com。それでも、全てのオフィスが容易に住宅化できるわけではなく、床の奥行きや設計の課題などハードルも残ります。それでも、この傾向はDCの高空室率への長期的解決策として期待されています。市のリーダーは2028年までにダウンタウン中心部に数千の新しい住宅ユニットが生まれ、空室オフィスの埋め戻しや、24時間稼働の活気ある都心再生を実現できると楽観していますdmped.dc.gov。
オフィスマーケットの重要な要因は、対面勤務に関する連邦政策です。2025年、新たなトランプ政権の下で連邦政府は、より多くの従業員のオフィス復帰を推進し始めました。オフィス復帰の義務化が連邦機関およびアーリントンのアマゾン第2本社のような大手民間雇用主にも及び、オフィススペースの利用率が徐々に増加していく可能性があります。marcusmillichap.com marcusmillichap.com。実際、オフィス出勤率が徐々に上昇しているというデータもあり、2025年末までには空室率が安定する可能性も示唆されています。しかし、懸念されるのは一般調達局(GSA)が政府のリーススペースの縮小強>に踏み切るリスクであり、今後数年で数千件のリース契約解除の可能性もあります。marcusmillichap.com。大規模な機関の縮小が起きた場合、老朽化した連邦建物やリース依存のサブマーケット(Southwest Federal Center、ランファント・プラザ周辺など)は、さらに空室圧力が高まるでしょう。要するに、DCのオフィス部門は岐路に立っています:RTO政策と用途転換による安定化という希望的シナリオと、デジタルワークや予算削減による需要減退という悲観的シナリオです。現時点では、コモディティ型Bクラスビルの賃料は下押し圧力を受けており(貸主はテナント獲得のため大規模な譲歩を提供)、不動産評価額も低下しています。投資家は慎重で、一部のオフィスタワーは割引価格で売却強>され、高金利によるリファイナンスストレスも発生しています。今後1~2年でリース状況が改善しなければ、老朽オフィスの任意売却や差し押さえ強>が現れる可能性もあります。
リテールとその他の商業セグメント
オフィス以外で見ると、2025年のDCの商業用不動産各分野の状況は一様ではありません:
- リテール:近隣型リテール(スーパー併設型センター、ローカルなショッピングストリート)は、強い家計所得や住民の通常活動再開による歩行者数の回復に支えられ堅調です。しかし、都心のリテール—特にレストランやカフェ、CBD内の店舗—はオフィス回復の遅れで苦戦中です。都心では平日ごとに出社する労働者が約50%と少ないため、ランチ需要やオフィス客に依存した店舗の売上が減少しています。コロナ明けの観光回復によりNational MallやGeorgetown等ではリテールの客足も戻りつつありますが、Metro CenterやFarragut周辺は依然として弱い状況です。主要回廊のリテール賃料は安定していますが、都心部の二次立地では空室率が上昇しています。注目すべきは、DC都心のリテール空室率が2025年に約12%に達した(仲介会社レポートによる)、という点で、貸主は空きスペースを埋めるため体験型テナント(ジム、医療オフィス、エンタメなど)へ転換しています。市もダウンタウン回復策として、小規模事業者に空き店舗埋め戻しの助成金を交付しています。
- 集合住宅(アパートメント):テナント側からの賃貸住宅については前述しましたが、投資の観点ではDCの集合住宅資産は依然として注目されるアセットクラス強>です。短期的な賃料横ばいにもかかわらず、安定運営中のアパートメントの空室率は比較的低下傾向(プロ管理物件で約5~6%)。投資家の需要が僅かに減速しているのは金利上昇で採算が悪化しているためです。DCのアパートメントのキャップレートは中5%台に上昇(以前は5%未満)、資本コスト増を反映していますが、長期的なファンダメンタルズはポジティブです。首都圏の人口は再び増加傾向強>(2024年中頃、前年比約2.2%増 ora-cfo.dc.gov、以前の減少からの反転)かつ住宅供給が逼迫強>しているためです。JPモルガンの分析によれば、2026年には新築アパートの供給がペースダウンするため、貸主は価格決定力を取り戻し、賃料およびNOIの成長が期待できます。jpmorgan.com Capitol Hill、Dupont Circle、NEなどの新興エリア強>では(古い賃貸物件のリノベで賃料アップを狙う)バリューアッド投資への関心も高まっています。一方で、DCの厳格なテナント寄り法制や多くの古い物件の賃料規制が投資家の賃料引き上げ余地を制限し、全国レベルの投資家が敬遠する要因にもなっています。総じて集合住宅はDCで最も健全な商業セクター強>であり、2025年は堅調な稼働に小幅な賃料下落にとどまり、住宅購入が難しい人が多い今後さらに強化される見込みです。
- ホスピタリティ(ホテル):DCのホテル業界は回復フェーズにあります。2023~2024年にビジネス・レジャー旅行が回復し、2025年初頭にはホテル稼働率・客室単価の上昇が見られました。収入分析局(Office of Revenue Analysis)は、ホテル宿泊売上が2.0%増強>(12ヵ月平均)および平均客室単価が前年同月比5.1%強>上昇と報告しています。ora-cfo.dc.gov 観光やコンベンション活動の活性化を映しています。ただし、ホテル市場はウィークデーの出張需要を中心にパンデミック前の水準には完全には戻っていません。会議場ホテルや官公庁向けホテルは2019年のパフォーマンスに及んでいません。投資家は今後回復を見込み、割安でホテルの取得機会を探り始めており、2026年以降、国際観光の完全回復と連邦機関の対面会議再開を見込んで投資が活発化する可能性があります。
- インダストリアル:DC市内には産業用不動産(倉庫・物流施設)はほとんどありませんが(多くは郊外に立地)、首都圏の産業用不動産市場はEC・データセンター需要で非常に堅調です。市内ではIvy CityやFort Tottenなどの小規模産業用用途(ブルワリー、メーカースペース、ラストワンマイル配送拠点など)の稼働率が高い状況が続いています。機能的な軽工業スペースの賃料は伸び、古い倉庫のクリエイティブオフィス化やリテール用途への転換も見られます。投資家にとっては、インダストリアルは地域的に有望なセクター(北バージニアやPrince George’s Countyで空室率4%未満)です。
まとめると、DCの商業用不動産はまさに二極化の様相です:オフィス部門が逆風・再発明強>に直面する一方、集合住宅やリテール、専門分野は慎重な楽観の中で回復を模索しています。市のコア回廊戦略は多様化強>、つまりオフィス依存を減らして住宅・教育(大学の都心進出等)・エンタメ用途を増やす方向です。現在、投資資本は最も選択的に流れています。すなわち、アパート取得、複合用途開発、ライフサイエンス用途へのコンバージョンなどに向かう一方、多くの投資家はオフィス市場底打ちや不良債権案件を静観しています。ワシントンの安定した官庁経済は下支え(連邦リースが多くを支え、法律事務所・NPOも定着)ですが、2025年は商業用不動産にとって過渡期であり、都市がポスト・パンデミック社会に適応する転換点です。
市場の主要な要因:経済、政策、人口動態
2025年のワシントンDCの不動産動向を決定づける基礎的な要因は複数あります:
- 雇用と経済:DC首都圏経済は堅調ですが、首都本体は最近やや軟調です。2025年初頭時点でDC全体の雇用は前年比0.4%減強>となり ora-cfo.dc.gov、公共部門(官庁職)は1.2%減、民間部門はほぼ横這いです。失業率は5.8~6.0%強>で全米平均より高め ora-cfo.dc.gov。2025年初の官庁大規模リストラや予算削減強>(政権交代影響)で不確実性が増し、特定の連邦機関の人員縮小や契約業者のカットバックが実施されました housebeautiful.com housebeautiful.com。これにより、不動産市場にも動揺が広がり、該当者の購入控えも発生しました。エコノミストによれば、連邦雇用の不安定さから転出や早期退職強>を選ぶ世帯もあるとのこと。housebeautiful.com 一方、DCのテック、観光業、教育分野では雇用増が続き、賃金水準も依然高い(官庁職はDCの全賃金の28%)。ora-cfo.dc.gov また、地域的にはバージニアのテック成長(例:アーリントンのアマゾンHQ2)も追い風です。総括強>:安定した雇用市場は住宅需要のカギです。2025年現在は小幅な雇用減とやや高い失業率が軽い逆風ですが、今後は雇用回復が予測されておりNARチーフエコノミストは全米で2025・2026年とも200万件超の雇用増強>を予想 nar.realtor nar.realtor。DCにその波及があれば住宅市況・消費マインドにはプラスです。逆に、予算バトルや景気悪化があれば不確実性強>が高まり住宅・商業不動産とも需要減につながります(DCの市場は政府閉鎖や選挙混乱の時に冷えがちです)。
- 人口移動・人口動態のトレンド:DCは長年人口増加が続きましたが、パンデミックで一時的に減少、その後は正常化傾向です。2024年半ばの推定人口は前年比約14,926人、2.2%強>増でした ora-cfo.dc.gov。都市の再再開や都市生活の魅力で再び新住民が戻ってきたのでしょう。しかし、2025年の人口移動パターンでは一部転出超過強>も観測されており、Redfinデータによると2025年2-4月で約20%のDC購入者が首都圏外移住を検索強>、一方で他都市からDC移住を検索した割合は3%でした。redfin.com 転出先は生活費が安い・引退先として人気のSalisbury(MD)、Virginia Beach、Miamiなど redfin.com。これは高額な住居費やリモートワークが、より手頃かつライフスタイル重視地域への流出を促している現象です。一方、DCへ転入してくるのは主にLAやNYCなど高コスト都市出身者であり、転勤やNYC/LAより相対的に手ごろなDCの給与レベルに惹かれている可能性が高いです。redfin.com 地元に残る80%のDC購入者も多く、ライフステージに応じて都市⇔郊外を移動 redfin.com。人口増+単身・少人数世帯の割合の増加で住宅需要全体は底堅いですが、ファミリー層やリタイア層の流出が続けば特定不動産の需要は軟化もありえます。郊外は強い競合相手で、2025年初はArlingtonやBethesdaなど近郊で二桁台の価格上昇となり多くの買い手を呼び込んでいます。washingtonpost.com washingtonpost.com DCは都市型アメニティ・治安改善・多様 な住宅供給で流出抑制と新住民誘致に取り組む必要があります。都心居住強化政策も、郊外脱出層を取り戻すための都市再生策の一環です。
- 金利とファイナンス:2022~2023年の住宅ローン金利急上昇はDCの市場にも大きな影響を与えました。2025年も金利は高止まりで、年初の30年固定ローンは6.5~7%強>程度です。これにより初回購入者の一部が脱落強>、また2~3%台の低金利でローンを持つ既存住宅所有者が物件売却/住み替えを控える「ロックイン効果」も発生し、取引量が抑制されています。好材料としては、今後金利は徐々に緩和強>との見方もあります。FRBは利上げを停止し2024年末には小幅な利下げも実施 nar.realtor。NAR予測では、2025・2026年の住宅ローン金利は現状の下限(~6%前後)で安定するとのこと nar.realtor。ただし超低金利への回帰は見込めず、大型財政赤字が長期金利の抑制を阻んでいます nar.realtor。DCにおいて、仮に5%台半ばまで金利が下がれば購入意欲の解放強>や住み替え促進に寄与するでしょう。不動産投資家も金利動向を注視しており、調達コスト増が2024~25年の商業物件取得・開発意欲を鈍らせています。今後金利低下があれば住宅・商業ともに取引増が見込まれファイナンスコスト減の恩恵強>が期待できます。今のところは「現金が王者」であり、住宅と投資物件の両方で全額現金購入者強>、特に高額帯で顕著です。costargroup.com まとめると、金利は2025~2028年の市場見通しのカギであり、安定的または低下基調ならDC市場を刺激、逆に急上昇なら冷え込みリスクとなります。
- 政策と法規制:首都としてのDCは、政策変化への感応性が極めて高いです。マクロ的には政府支 出・人員・機関立地強>に関する連邦意思決定は地元不動産に直接的な影響を及ぼします。たとえば官庁分散化が進めば住宅・商業不動産の需要減退、逆に官庁増員や新機関新設は需要増をもたらします。2025年は初期の削減・凍結(例:USAID資金凍結)で市場心理は傷つきましたが cbre.com、年央には一部機関で必須業務の再採用も進みつつあり、議会予算決定が今後の方向を左右します。DCのローカル政策も重要です。住宅供給促進強>(Housing Trust Fund予算や賃料規制強化等)は投資や開発に影響し、最近ではDCの低所得者住宅債券枠の使い切りで新規計画の停止という事態も発生 washingtonpost.com。税制・インセンティブ面ではDCは比較的高い不動産税・譲渡税もあり、取引コスト上昇要因です。2025年はオフィス用途転換への税制優遇強>も可決され smartcitiesdive.com、政策で市況誘導も試みられます。用途地域緩和強>の議論も進行中(ダウンタウンで住宅等を増やすため)。また、TOPA(テナントによる優先購入権)強>の存在はDC特有の集合住宅取引の複雑化要因です。最後に2024年選挙強>(2025年新大統領期)は微妙な波及があり、新政権関係者の転入で高級住宅市場が「急騰」したケースも見られました(Kalorama、Georgetown、McLeanなど)。washingtonpost.com 今後も連邦レベルの巨視的政策(税制改正・インフラ法・移民政策等)はDC不動産市況に波及します。
- 人口構成の変化:DCの購入層は変容しています。ミレニアル世代強>(現在遅い20代~40代)が最大買主層で、徒歩圏・都市的生活志向が強くShaw、Capitol Hill、Navy Yard等の人気を支えています。同時に、ミレニアルの一部は家庭形成期となり、より広い住まいを求め近郊やDC内でも子育て向きエリア(AU Park、Brooklandなど)に強い需要が集中。Z世代(20代の賃貸層)もトレンディなアパートやコリビングへの需要増を作り出しています。また多世帯同居強>(親世代同居、デュプレックス需要)の増加傾向も見られ、これは住宅コスト高が背景です。nar.realtor エンプティネスター・リタイア層強>は郊外の広い持家から都市型コンドミニアムへのダウンサイジングや温暖地への移住志向も強く、NW部のコンド需要や南部流出の一因です。DC人口は高学歴・流動性高く、投資・パートタイム居住(外交官や政治家のセカンドハウス)強>も多いのが特徴で、結果として特定サブマーケットではコンド率・非実需率が高まります。全体としてDCの人口動態は今後も基礎的な住宅需要の強さ強>を裏付けますが、需要の質的変化(リモート増でタウンハウスや小型一戸建て需要↑・都心コンド増でシニア・ダウンサイザー誘致…等)も予見されます。市の都市計画やディベロッパーも、世帯規模縮小やワーカー向け住宅、若年層向け設備(ペット可や在宅スペース等)に着目しています。
要するに、ワシントンの不動産は、連邦要因・地方政策・人口動態が複雑に絡む希有な市場です。2025年時点で金利高・人口流動にも関わらず価格・賃料が大きく下がらない粘り強さは、首都圏の高い魅力を示しています。一方で政策や経済動向への感応が非常に大きく、住宅・商業市況の今後を占うには、議会や市議会決定の動向へ敏感である必要があるでしょう。
近隣レベルの洞察:ホットスポットとトレンド
ワシントンDCの不動産は、著しく近隣ごとに左右されることで有名であり、市場状況はエリアごとに大きく異なります。以下では、いくつかの主要な近隣や地域にスポットライトを当て、DC内の多様なミクロマーケットを紹介します。
ジョージタウンおよびノースウェストDCの高級エンクレーブ
ジョージタウンは、DCで最も格式高い近隣のひとつとして長く知られ、市場の最上位層を象徴しています。この歴史的なエリア(石畳の道路や高級ブティックが立ち並ぶ)は、中央値住宅価値が約127万ドル niche.comであり、実際の売却価格はクラシックな長屋や一戸建てでしばしば150〜200万ドルを超えます。2025年のジョージタウン住宅市場は堅調でした。住宅価格は過去1年でおよそ+3〜5%上昇し(Redfinではある月で中央値が前年比17%増と記録されていますが、これは高額物件の売買が偏った場合に影響されます)zillow.com redfin.com。この需要は裕福なバイヤー(政治任命者、ロビイスト、外国人バイヤーを含む)が押し上げており、多くが現金で購入します。ジョージタウンはエリアの小ささや歴史的保全(取り壊しや新開発がほとんどない)のため、在庫は常に不足気味です。また、高価格帯であるため販売まで平均して日数がかかりますが(ジョージタウンの在庫日数は市全体の中央値より高いことが多い)、2025年には価格設定が適正な物件は依然として売れました。賃貸面では、ジョージタウンは高額エリアですが、賃貸居住者の割合は多くありません(ほとんどの住民が所有)。中央値家賃は約3100ドルniche.comで、高級アパート/コンドミニアムや一戸建て賃貸を反映しており、大学生や裕福なプロフェッショナルをターゲットに賃貸する大家も多いです。投資家にとって、ジョージタウンは高利回りよりも資本の保全と長期的な価値上昇をもたらします(高い物件価格のため、賃貸利回りは比較的低いです)。ジョージタウン近くの類似するノースウェストDCの高級エンクレーブ(カロラマ、アッパーノースウェスト(AUパーク、スプリングバレー)、チェビーチェイス)も好調です。これらのエリアは2025年にラグジュアリーバイヤーの流入が見られました(例:大使館やオバマ元大統領の自宅で知られるカロラマも好調)。AUパークやクリーブランドパークでは、一戸建てが150〜200万ドルで取引されることが一般的で、場所によっては大幅な上昇も見られました(20016ジップコードでは28%の価格上昇)washingtonpost.com。これは供給の非常な限定や、パンデミック後に広い高級住宅を求める需要増が要因です。これらは安定した優良市場であり、リスクは低いものの参入価格が高いため取引件数は少なめです。一方で最近のトレンドとして、一部の古い大邸宅を区分所有またはコンドミニアムに転換するケースも増えており(例:カロラマの豪邸を3〜4戸の高級コンドミニアムに)、これらエリアでの新たな小規模所有機会が生まれています。
キャピトルヒルと都市中心部
キャピトルヒルは、米国議会議事堂の周辺歴史地区を含み、イースタンマーケットやヒルイーストといったエリアも広く内包する、DC住宅市場の指標となるエリアです。連邦長屋、コンドミニアム、新しめのアパートも混在する多様な地域です。キャピトルヒルの中央値住宅価値は約94万8000ドル niche.com で、多くの長屋住宅が物件や議事堂への距離によって80万〜120万ドルのレンジで取引されます。過去1年では価格が横ばい〜緩やかに上昇(前年比+3〜4%程度)realtor.com。議員スタッフ、ロビイスト、中心地志向の家族から常に安定した需要があり、堅調なエリアです。2025年には高金利の影響でやや過熱感が和らぎましたが、良い物件は依然としてすぐに売れます。キャピトルヒルの市場在庫日数の中央値は年初で約10日(多くの場合複数オファー)でした。Bright MLSのデータでも価格の底堅さが示され、2025年2月のヒルでの販売は周辺外縁部が下落する中でも価値を維持しましたwashingtonpost.comwashingtonpost.com。部分的な出勤再開によって、以前遠方に移った連邦職員や議会関係者が再び戻る動きも見られ、ヒルでの住宅需要を後押ししています(専門家も「住まいの場所を再考」して都心近くに戻る人が増えていると指摘washingtonpost.com)。
キャピトルヒルの賃貸市場も活発です。住民の約半数が賃貸で暮らしており、中央値家賃は約2,600ドル niche.comです。若いプロフェッショナルは長屋のイングリッシュベースメントや、Hストリート沿いの新しいアパートを借りることが多いです。キャピトルヒルには複数のミクロ市場が共存します:イースタンマーケットや議事堂に近い高価格帯の「一等地」と、アナコスティア川寄りでDCが旧RFKスタジアム周辺を再開発しているヒルイーストのような新興エリアです。ヒルイーストや隣接するネイビーヤードは若い購入者・賃借人を引き付けており、キャピトルヒル中心より比較的お手頃なコンドミニアム価格となっています。ネイビーヤード(キャピトルリバーフロント)は元工業用地が高層ビルとナショナルズパークの一大タウンに生まれ変わり、2025年の中央値販売価格は60〜70万ドルでしたrealtor.com。興味深いことに、ネイビーヤードは同年4月に価格下落(前年比-14%の中央値下落)redfin.comを記録しており、これは新規コンド供給の増加や前年より高額物件の取引がなかったことが背景と見られます。今は買い手有利の市場で、一部物件は平均でやや下げて売れる傾向がありますrealtor.com。しかし中長期的には成長路線で、ウォーターフロントの公園やレストラン、都心への利便性から人気が続いています。ネイビーヤードの賃貸需要も強く(賃貸居住者が大半)、1ベッドルームで約2,700ドル、2ベッドなら約3,600ドルです。新規供給が非常に多いため、2025年は賃借人側の交渉力が高く、多くの大家が特典を提供しています。今後も同エリアの環境成熟に伴い売買市場は安定化し、すでに米東海岸で最も活気のある新都市ハブのひとつとなっています。
その他の都市中心部では状況は様々です。ダウンタウン/ペンクォーター(ギャラリープレイスやチャイナタウン周辺)はCOVIDの影響で需要が弱かったコンドミニアムが多く、価値回復は緩やかで依然ピーク以下です。オフィスから住宅への転用推進によって、将来的にダウンタウンのコンド価格が上昇し、より住みやすいエリアになる可能性もあります。ローガンサークル、ショー、Uストリートコリドーのようなエリアは2010年代に急成長しましたが、引き続き若者に人気で価値を維持しています。ローガンサークルのコンドは1ベッドで70万ドル以上が一般的です。これらエリアはナイトライフと居住感のバランスが良く、安定した需要を保っています。2024〜25年にショー周辺で新たに完成した一部新築コンドミニアムは高金利環境下でやや下げた価格設定ですが、販売状況は健闘しています。デュポンサークルやアダムスモーガンも挙げるべきで、いずれも古くから人気のあるエリア。コンデ市場は成熟しており、価格は安定またはやや上昇の傾向。投資家にとっては若手社会人向け賃貸コンド需要が魅力です。
都市中心部の高級コンドミニアム市場も注目に値します。ザ・ワーフ(サウスウェストウォーターフロント)やウェストエンドのような建物では、100万ドル単位で売れる物件があります。2025年の超高級市場(販売上位5%)は活況で、DCの高級住宅取引の3分の1が現金でしたwashingtonpost.com。ウェストエンド、カロラマ、ジョージタウンのようなエリアでは新築高級コンドが$1,400/平方フィートを超えるものも出るなど、過去最高額を記録しています。政権交代で新たな富裕層が流入し、このセグメントを熱くしています。たとえば、ジョージタウンのウォーターフロント近くの新築ペントハウスでは500万ドル以上で取引されることも。このクラスの買い手は金利の影響を受けづらく、DCの高級市場は株式市場や世界情勢により左右される傾向があります(2025年初頭は強含みでした)。
キャピトルヒル&都心部のまとめ:職場や利便施設への近さが引き続き高いプレミアムを生みます。キャピトルヒルは堅調で強いエリアであり、とくにクラシック住宅には安定人気があります。中心部近接(ネイビーヤード、サウスウェスト)は新築・建設ラッシュによる短期的な供給過多で流動的ですが、ここが新しいDCとして成長が期待されます。本格的なダウンタウンはパンデミック後の再定義過程ですが、居住者やアート・文化の誘致策が動き出しており、これらが成功すれば2020年代後半に意外な復活ストーリーとなる可能性があります。
新興および十分なサービスが行き届いていない地域
中心部のDCが高騰する中、新興地域にますます注目が集まっています。これらはかつて見過ごされていたものの、今では(比較的)お得を求める購入者や投資家/投機家にとってチャンスのある場所です。
アナコスティア川東部:DCのワード7と8、例えばアナコスティア、コングレスハイツ、ディーンウッドなどの地域は、市内でも最も住宅価格が低いエリアです。例えば、ヒストリック・アナコスティアの中央値住宅価値は約$452,000であり、niche.com、DC全体の中央値のおよそ3分の1です。こうした地区は歴史も豊かで、入門価格帯の一戸建て住宅(アナコスティアにはチャーミングなヴィクトリア時代の家々が多い)や新築向けの広大な土地も多く揃っています。2025年、ワード7と8の住宅価格動向はまちまちです。アナコスティアの一部ではむしろわずかに価格が下落しており(例:4月の前年同月比−2.6%)、realtor.com、市場がまだ完全には活性化していないことを示しています。これは主に、こうした地域で典型的な購入層である予算に敏感な買い手が金利上昇で圧迫されていることや、地域イメージの課題(犯罪や学校への懸念から二の足を踏む買い手がまだ多い)による可能性があります。しかし、区と開発業者はここへの投資を拡大しており、11th Street Bridge Park(アナコスティアとキャピトルヒルを結ぶ高架公園)などのプロジェクトや各種の手頃な住宅および商業開発が進行中です。市の包括的計画では、2028年までに川の東側に数千戸の新規住宅供給を目指しています。投資家もすでに活発で、タウンハウスのリハブやフリップも見られます。家賃は低水準から上昇しており(アナコスティアの中央値家賃は約$1,272 niche.com)、リノベーション済みの3LDKタウンホームは今や$2,000以上で貸し出されています。これらの地域が変われば、評価上昇のポテンシャルは大きいです。主要なリスクは、時間軸が長くなることと、広範な経済成長が必要な点です。これはコミュニティ変革への賭けとも言えます。しかし、DCで一戸建て住宅が$400K以下というのは極めて稀で、アナコスティアやマーシャルハイツなどは初めての購入者(DC職員でインセンティブを使う人も含む)にとって手ごろなオアシスです。今後数年、川の東側でさらなる開発発表が期待できます。市長も公平な成長を最優先に掲げています。
ペットワース、ブライトウッド、アッパーノースイースト:北東側クオドラントやDC最北部、ペットワース、ブライトウッド、ブルックランド、フォートトッテンといった地域は着実に上昇基調です。これらはタウンハウスや戸建ての混在地域で、NW DCよりは安いものの、中流家庭や若いプロフェッショナル層の流入で確実に価値を上げています。例えば、ペットワースの2025年初頭の中央値売出価格は約$750K(前年比約6%アップ)nomadicrealestate.comで、10年前は“穴場”だったのが今や憧れの住所となった進化を物語っています。伸びを支えているのは新たな小売や飲食(ジョージア通りやブルックランドのモンロー・ストリート・マーケットに続々と新しい飲食店やカフェがオープン)、さらに交通利便性(グリーン/イエロー、レッドメトロラインがエリア内)。投資家は特にブルックランドでメトロや大学(カトリック大学)近くにコンドミニアムやアパート建設に殺到しています。2025年の課題の1つは在庫増で、ペットワースは売り出し物件が増加し、選択肢の多さから価格上昇も適度に抑制されています。ただしリノベ済みや割安な物件は今なおすぐに売れる傾向です。これらのエリアは、通年安定した需要があり(地元の住み替え層や一部投資も多い)、パンデミックによる揺れもあまりありませんでした。今後もDC全体の需要が堅調である限り、ダウンタウン外周の「ミドルリング」(中心地のすぐ外側)は着実な価値向上が続きそうです。NWより割安で、庭付き住居を望む家族層にはますます人気
NoMaとHストリート回廊:ユニオン駅の北側(NoMa、エッキントン)や隣接するHストリートNE回廊は、かつて工業地帯や無視されていたエリアがホットなマーケットに生まれ変わった一例です。2025年の時点で、NoMaはオフィス(NPR本社など)と小売・アパートが揃った定着済みの住宅ハブ、Hストリートはレストランやナイトライフが集積し、その周辺に新築コンドミニアムも増え賑わうストリートです。ここのコンド価格は幅広く、古いビルのワンルームなら$400K台から、新しい広い部屋なら$800K以上にもなります。ストリートカーや今後予定のユニオン駅の拡張も先行きに追い風です。2025年の注意点を挙げると、こうした高密度地域の一部コンドでは、買い手が新築インセンティブ付き物件等多様な選択肢を持つため、市場にやや長く滞留する傾向も出ています。しかし金利が正常化すれば、ここでの初回購入層の需要回復は再び見込めるでしょう。
最後に、サウスウエスト・ウォーターフロント&ザ・ワーフ:もはや“新興”エリアではないものの(ザ・ワーフ第一・二期が数年前に竣工)、今なお進化中です。高級コンドやホテル、エンターテインメントの集まる新たなライフスタイル地区で、ワーフの価格は最高水準(コンドによっては1平方フィート$1,000超)。2025年、ワーフの中古物件は人気の継続で好調です。SWの数ブロック内陸側には、まだ比較的手頃な価格のミッドセンチュリーなコンド(例:ウォーターフロントタワーズ)が残っており、価値重視の選択肢になっています。また、SWエリアは新設のAudi Field(サッカースタジアム)やバザードポイント再開発の盛り上がりの恩恵も受けています。
地域動向を総合すると、DCの不動産は極めてローカライズされていることが分かります。NWやキャピトルヒルなどの裕福な既存地域は供給の少なさと高所得層の買いで安定的または価格上昇傾向です。新開発エリア(ウォーターフロント、NoMa、ネイビーヤード)は一時的な供給過剰も見られますが、長期的には特に若い層に強い魅力があります。川の東側やノースイーストの新興地域は成長フロンティアであり、リスクもリターンも高め。開発が進めば不動産価値が大きく上昇する可能性がある一方、投資が止まれば停滞もあり得ます。投資家や住宅購入者は、各地域ごとの指標比較が賢明です(下記の表1を参照)。DCは多様性豊かで、歴史と風格ある地域からこれから注目の新興地区まで多様な予算や希望に応じた選択肢が揃っています。
表1 地域別住宅市場スナップショット(2025年)
地域・所在地 | 中央値住宅価値(2025年) | 中央値月額家賃(2025年) | 特徴・市場動向 |
---|---|---|---|
ジョージタウン(NW DC) | $1,270,000 niche.com | $3,089 niche.com | 歴史ある裕福な町。高級住宅・高級コンドが多く、富裕層同士の激しい競争市場。年3~5%台の価格上昇。賃料利回りは低いが長期的な値上がり率は高い。大半が居住用(「住宅が手頃」と答えた人はわずか約17%)niche.com。 |
キャピトルヒル(中央NE/SE) | $948,000 niche.com | $2,608 niche.com | 米議会議事堂近くの象徴的なタウンハウス地区。政府関係やプロフェッショナル層のファミリーに安定需要。価格は横ばい~年+3%、中央値は$800K~900K。徒歩圏や公園多いが、住宅が手頃と感じるのは約5%(供給超タイト)niche.com。所有者・賃貸の混在。 |
ネイビーヤード/キャピトルリバーフロント(SEウォーターフロント) | $691,000 niche.com | $2,785 niche.com | 近年再開発されたウォーターフロントで新築コンド・高級アパートが多数。住宅価格中央値は約600K~700Kだが、新規供給過剰により価格は前年割れ傾向(*一部下落)redfin.com。若手プロフェッショナル層が大半、1BR家賃は約$2.7K。ライフスタイルは活気あるが、短期的には供給過剰で買い手市場(平均で売値を少し下回って成立)realtor.com。 |
ヒストリック・アナコスティア(川向こう東、SE) | $452,000 niche.com | $1,272 niche.com | 新興かつ歴史的に十分なサービスが届かなかったエリア。DC最安値水準で、初回購入者向けの機会が多い。リフォーム物件も増えつつあるが2025年の価格はやや下落傾向(前年比約−2%)realtor.com。賃貸が多いが、手頃と感じる割合は高め(居住者の50%が“住宅が手頃”と回答)niche.com。再開発進展次第で長期的な投資ポテンシャルあり。 |
出典:中央値価格・家賃予測はNiche2025年推定値 niche.com niche.com niche.com niche.com;価格推移はRedfin/Realtor.com参照。
表が示すように、地域ごとに価格帯や賃貸プロファイルは大きく異なります。ジョージタウンの住宅中央値は市全体の約3倍である一方、アナコスティアは市中央値の約半分です。賃貸利回りは、より手頃なエリア(例:ネイビーヤードやアナコスティア)で高く、ジョージタウンのような超高級地域では低くなります。たとえば、投資家が賃貸物件を検討する場合、ネイビーヤードで約4~5%のグロス利回りを得られるのに対し、ジョージタウンでは約2.9%にとどまる可能性があります(価格対賃貸比より)niche.com niche.com。DCにおける地域選択は多くの場合、コストと利便性/ライフスタイルのトレードオフとなります。
今後も、強い地域は引き続き強くなると予想されます。良好な交通網、充実したアメニティ、安全性を持つエリアは引き続き高い需要を集めるでしょう。一方で、区による公平な開発推進により、新興エリアにもインフラやサービスの向上がもたらされ、成長の加速が期待されます。住宅購入者にとっては、まだ「発展途上」の地域で割安に購入し、エリア改善による資産価値の上昇を享受できる可能性があります(根気と若干のリスクが前提)。たとえば、アナコスティアの11番通りブリッジパーク周辺や、今後再開発されるマクミランろ過場跡地(ブルーミングデール)周辺などは、今日のバリューバイであり、将来の人気住所となるかもしれません。
新たな投資機会とリスク
2025年、ワシントンDCの不動産市場には、投資家・開発業者・目利きの購入者にとってチャンスとリスクの両方が存在します。以下に、注目すべき主な投資機会と、市場で立ち回るうえで警戒すべきリスクをまとめます。
新たな投資機会:
- オフィスから住宅へのコンバージョン: オフィス空室率が過去最高を記録する中、DC市は未活用オフィスビルのアパートや複合用途への転換を奨励しています。これにより、開発業者や投資家は傷んだオフィス資産を割引価格で取得し、税制優遇を活用しながら再活用するチャンスを得られます bizjournals.com。この分野の先駆者は、取得コストの低さと、供給制約のある住宅市場に転換住戸が出ることで将来的な賃貸収入を期待できます。ダウンタウンの新築制限もあり、成功したコンバージョン物件にはほぼ新たな競合がありません。もしバウザー市長の「2028年までにダウンタウン居住者15,000人増加」の計画が実現すればdmped.dc.gov、今投資した層は、活性化や住宅価値上昇の恩恵を受けられるはずです。
- 成長余地の大きい割安エリア: 先述の通り、アナコスティア、コングレスハイツ、ディーンウッド、およびノースイーストの一部エリアは、DC平均と比べ大幅に割安で取引されています。市や開発業者によるプロジェクトも進行中(例:コングレスハイツのセントイリザベスイースト再開発、新規住宅・小売・アリーナ)。投資家がこうした新興地域で物件を購入し保有するのは中長期戦ですが、エリア改善による値上がりの波にうまく乗るチャンスです。緩やかな高級化やアンカーテナント(新規スーパー等)の出現だけでも、住宅価格は大きく押し上げられます。実際、ペトワースやブルックランドは2010年代、リテールやトランジット投資後に二桁成長を記録し、今後イースト・オブ・ザ・リバー地区でも同様の軌跡をたどる可能性があります。オポチュニティゾーン指定(DC内の一部過小投資地域)もあり、適用した場合は税制優遇でリターン拡大が可能です。
- 賃貸収入・建て貸し: 住宅購入の手ごろさが低下する中、DCの賃貸需要は引き続き高止まりしています。賃貸物件に投資することで安定したキャッシュフローが期待でき、特に若年層の多いデュポン/アダムスモーガンや政府関係者が多いフォギーボトム周辺は人気です。2025年の家賃は横ばい傾向ですが、2026年以降新規供給が減ることで、市場が締まり再び家賃の上昇余地が生まれる見込みです jpmorgan.com。今、価格が停滞し一部売却物件が出始めたタイミングで賃貸ユニットや小規模集合住宅を取得すれば、将来の利回りアップを狙えます。また、ビルド・トゥ・レント(建売賃貸)という新トレンドも浮上中。郊外で家族向けの新築賃貸タウンハウス団地が始まっており、DCでは小規模コンドミニアムを投資家が保有賃貸として開発する事例も増えるかもしれません。高家賃(DC中央値は約$2,500)zumper.comは、管理コストを抑えられれば高い利益率を見込めます。
- 高級およびニッチ市場: DCの高級住宅市場は堅調で、希少な物件はグローバルな富裕層買い手を惹きつけます。カロラマ地区のブラウンストーンを超高級リノベで投資し販売するなど、うまくやれば供給制約と高所得者のプレミア志向によって大きな利益が見込めます。同様に、学生向け住宅(ジョージタウン大・ハワード大・GWU生向け)や、短期賃貸(外交官やビジネス客)などのニッチ分野も有望です。DCの厳しいAirbnb規制には注意が必要ですが、観光やビジネス需要の高いエリアでの家具付き月極賃貸は安定した収入源となります。
- グリーン開発とレトロフィット: DCは全米でも有数のサステナビリティ重視都市です。省エネ改修やLEED認証新築に注力する開発者は、市の助成金や許可優遇を得やすくなります。エコ意識の高い賃借人・購入者からは、高額家賃・高額売却も期待できます。今後建築規制も強化(例:DCビル・エナジー・パフォーマンス基準では省エネ義務化)されていく見込みのため、古いビルを基準適合させて売却益や運営コスト削減を狙うことは有望です。
リスクと課題:
- 金利・資金調達リスク: ほとんどの投資・購入において目下最大のリスクは、高金利環境です。今後も金利上昇や高止まりが続けば、資金コスト増による利回り低下や買い手需要の減退(売却出口が難化)、資産価値の下落(商業物件の還元利回り拡大)が避けられません。多くの予測で今後は横ばい~やや低下と見られていますが nar.realtor、確証はありません。投資家は慎重な想定で事業収支を立てるべきで、既存の低金利ローン引き継ぎや自己資金比率拡大など、創意工夫でリスク軽減が求められます。また高金利により、多くの自宅所有者がローンの「閉じ込め(家計に有利な低金利で売却しづらい)」状態が続くため流通在庫が減少し、価格は堅調でも取引回数減の可能性が高いです。
- 経済・政治的不確実性: DCの不動産は、連邦政府や景気循環との関連性が極めて強いです。今後数年で景気後退や連邦予算危機が発生すれば大きな影響を受けます。例えば連邦予算の大幅削減や長期政府閉鎖が起これば、雇用減少や住宅需要減退が直ちに起きる可能性があります。2025年初頭の「連邦リップタイド」(連邦職員の大量削減)は、市場が急変する一例です washingtonpost.com。2028年の大統領選など政治的節目は常に市場の様子見要素となり、不確実性増大ももたらします。さらに、DCの依存するホワイトカラー産業(コンサル・法律・IT)が全国的不況で打撃を受けると、高所得移住者の流入も鈍化しかねません。対策: 投資家は緊急資金確保・過度なレバレッジ抑止で短期的逆風に備えるべきです。歴史的には政府依存でDCの不動産市場は他都市より安定的ですが、不況に無縁ではありません。
- 一部セグメントでの供給過剰リスク: 全体として住宅供給はタイトですが、特定セクターは一時的な供給過剰に陥る場合があります。高級コンドミニアムはその典型で、ザ・ワーフやウェストエンド、キャピタルリバーフロントで新築が集中、大幅な買い手優位となり値引きも発生しました。コンドを転売・賃貸投資する場合、類似物件の新規供給量を必ずチェックしましょう。賃貸アパートも、多数のプロジェクトが同時に完成すると一転して厳しい市況(例:ネイビーヤードやNoMaで数千戸完成予定)になる懸念も。2025年供給は多いですが、2026年供給減少が需給バランス回復の救いとなるかもしれません jpmorgan.com。しかし需要減速や建設再開(資金調達コスト低下など)が起これば、空室率増・家賃伸び悩みリスクも。オフィスの過剰供給はすでに現実問題であり、賃貸または転換の見込みが立たない旧型オフィスはストランデッドアセット(実質価値ゼロ)となる恐れもあります。
- 政策・規制リスク: DCの規制環境は「諸刃の剣」です。借家人保護(TOPAや旧ビルの家賃規制)は追い出しや家賃値上げを困難にし、大家のキャッシュフローを悪化させる場合あり。2025年提案のRENTAL法案はパンデミック前水準に退去手続き迅速化を図る内容 dhcd.dc.gov であり大家向きですが、さらなる家賃規制拡大や空室課税強化など新策も浮上しうるため、DC市議会の動向には常に注意が必要です。加えて、DCの固定資産税は地価上昇で急増傾向もあり、急成長エリアで税負担が一気に膨らむ場合も。新たな環境規制(省エネ基準等)によるコンプライアンスコストも要警戒で、古い集合・商業ビルはこれら基準適合に多額の改修費が必要な場合があります。
- 建築コスト・労働力問題: 開発業者にとって大きなリスクは、建築コストの高止まりです。材料費高騰や建設人材不足によりコスト増、その影響でプロジェクト凍結も見られます。開発・大規模改装を計画する場合、コスト超過に十分留意しましょう。サプライチェーン遅延も(以前ほど深刻ではないものの)今もプロジェクトの進捗に影響します。工期遅延は、市場悪化時納品ならコスト以上の損失につながります。
- 気候・環境リスク: ワシントンDCも気候変動リスクを無縁とはできません。ウォーターフロント(ポトマック川・アナコスティア川流域)の洪水リスクは常に存在し、ネイビーヤードやワーフの一部は標高が低いゆえ、将来の海面上昇や高潮・豪雨で被害が拡大するシナリオも(市は堤防・ポンプ新設などで対応中)。海沿い大都市ほど差し迫ってはいませんが、こうしたエリアに投資する場合は洪水保険や建物のレジリエンス強化策も検討しましょう(フェデラルトライアングル等ダウンタウンでも豪雨被害は過去発生)。また、近年の記録的猛暑で老朽ビルの空調・耐熱対策もコストだが、同時に付加価値にもなりうるでしょう。
これらの機会とリスクを天秤にかけつつ、多くの目利き投資家はDCに対して長期視点を持っています。首都という特殊性により、安定した需要と投資が宿命的に続く都市であることは強みです。2026~2028年の展望は、重大なショックがなければ慎重ながらも楽観的です。経済成長は中程度、人口微増、コンバージョンによるオフィス空室縮小等が重なれば、DC不動産の魅力はさらに高まる見込みです。ただし、今後数年は高金利局面の「出口」やポストCOVIDの都市構造変化に対応する舵取りが求められます。
2026~2028年の市場見通し:予測と期待
今後を見据えると、専門家たちは2026~2028年のワシントンDC不動産市場について、徐々に成長し安定へ向かうとし、都市が新たな経済状況に適応する中で重要な変化があると予想しています。以下は、利用可能なデータと専門家の分析に基づく予測です:
- 住宅価格の予測:2024~2025年の緩やかな上昇の後、DCの住宅価格は今後2028年まで緩やかで持続可能なペースで上昇し続けると予測されています。複数の予測によると、今後数年間の年次上昇率は年間2%~4%程度とされています theluxuryplaybook.com。例えば、ある分析ではDCの住宅価格が今後12か月(2026年半ばまで)で約2.5%~3.5%上昇するとされています theluxuryplaybook.com。全米リアルター協会のエコノミストも同様に、全米ベースで2025年は+2%、2026年も+2%の上昇と予測しています nar.realtor。DCもこれとほぼ同様の動きを見せる見込みですが、地元の在庫が引き続き限られればわずかに上回る可能性もあり、2025年に新規物件が大量に売り出され続ければ下回る可能性もあります。2028年までには、DCの中央値住宅価格は現在より10~15%高くなる可能性があります。実際、2025年の中央値70万ドルの住宅は、2028年には約77万~80万ドルとなる計算です。これはインフレが緩やかで金利が下がるという前提で、所得の伸びと同じかそれ以上の価格上昇となります。突発的な急上昇や急落は想定されていません(予期しない出来事がない限り)。DCの価格推移は構造的な住宅不足と強固な雇用基盤のため比較的安定しています。一点注意点としては、コンドミニアムセグメントは戸建住宅よりも鈍化しやすく、在庫が多いうえ建設も続いているため、一部の古いコンドは高額な管理費や新築競合によって価値が下がることもありえます。一方、人気エリアの戸建は4%以上の年次上昇も見込まれます。
- 売買件数と市場活動:2025年は全米で売買件数が回復する年と予測されており、DCもそれに続き取引件数が2026年まで増加していく見込みです。NARは全米の中古住宅販売件数が2025年に+9%、2026年に+13%増加すると予測しています nar.realtor。これは、住宅ローン金利が徐々に低下し、市場参加者が増加するからです。DCの場合、極端な在庫不足が解消され、2026年には市場の安定やより低い住宅ローン金利への乗り換えを見込む売主が増加する可能性があります。2027~28年には、住宅売買件数がパンデミック前の通常レベルに戻ると予想されます(30年固定金利が5~6%台に下がると仮定)。買い手層の構成も変化する見込みで、ミレニアル世代が40~50代に差しかかり買い替えが増え、ジェネレーションZも住宅購入へ参入し始めるでしょう。また、連邦政府が拡大したり機関を再びDCに戻す(効率化のため都心へ移転・統合という話もある)ことがあれば、住宅需要に拍車をかけます。一方、リモートワークが広く持続するなら、購入を控え賃貸に留まる層や買い替え手控え層も出てきます(これが件数に影響)。ただし取引低迷期は最悪期を脱しているという見方が大勢です。2022~2024年の「様子見」から、金利や生活事情に応じて積極的な住み替えモードに移行(結婚、子育て等で住宅ニーズはそう長く先送りできないため) nar.realtor。
- 賃貸市場の見通し:2026年までに、DCの賃貸市場は再び逼迫する可能性が高いとされます。前述の通り、2026年は新規賃貸アパート供給が2025年比で約35%減少する見込みで jpmorgan.com、在庫増加ペースが鈍化します。経済が安定していれば、2024~25年に増加した新規供給に需要が追いつき、空室率は下がり家主の価格決定力は強まるでしょう。2026~2027年には賃料が年3%~5%程度上昇に転じる可能性もあります。賃貸情報サイトの一部予測では、2028年まで全米賃料はインフレ率をやや上回るペースで伸びる見込みですが、DCは高コスト都市のため少なくとも同等の上昇が期待されます。実際、中央値賃料が現在2,500ドル程度なら、2028年には2,700~2,800ドル近くになる可能性があります。ただし、リモートワークで遠方(ボルチモアやフィラデルフィアなど)に住みつつ時折通勤する人が増えれば、DCの賃貸需要は弱まることも考えられますが、今のところ賃借人の8割は地域内で探している状況です redfin.com。もう一つ大きな要素が、ダウンタウンのオフィス改装による数千戸規模の新規賃貸供給で、2027~28年までに「ダウンタウン住宅化プログラム」で1万3千人分(目標1.5万人の90%)の新規住宅が計画されています dmped.dc.gov。これらが一気に供給されれば、ダウンタウン賃料は軟化する可能性があり、空きビル活用という都市全体にはプラスですが、家主にとっては注意が必要です。まとめると、2027年には再び家主有利な賃貸市場となるものの、ラグジュアリー物件の供給次第で高級賃料は分化、中間層の賃料は割高感によりより均一な上昇が見込まれます。
- 商業用不動産の回復:オフィス市場は最も予測困難ですが、回復基調はゆっくりと予想されています。2026~2028年には、オフィス空室率がピークを打ち減少へ転じる可能性があり、改装(住宅転用)が進み、出勤回帰の定着で需要が安定すれば実現できます。コロナ前の10%程度に戻るのは難しいものの、2028年までに22%から十数%台まで下がるシナリオも考えられます。Marcus & Millichapの2025年展望では、転機として新規建設の歴史的低水準やRTO(出勤義務)要請による空室増加の鈍化が指摘されています marcusmillichap.com。連邦機関の賃貸継続(GSAが予定以上にリース削減しなければ)や民間需要の回復があれば、2026年までに最悪期を脱することが期待されます。オフィス賃料は当面二極化が続き、一等地やラグジュアリー物件は緩やかに上昇、B/Cクラスは大幅値下げ後に安定する見込みです。用途転換次第で、2028年までに複数物件が住宅へ生まれ変わり、他社のモデルケースとなるかもしれません。転換コストが依然高く変換が進まない場合は、不適合な旧型オフィスの過剰在庫がダウンタウン経済や市税収にリスクをもたらしますが、市の積極的な補助策(税優遇、助成金など)から、住みやすい都心実現に本気で取り組む構えが見えます。楽観的には、2028年のダウンタウンに数千戸の新住宅、人口増、新たなリテール(スーパー等)が生まれ、空室危機の緩和となります。逆に進捗が鈍い場合は、さらなる支援策が必要となります。
- 資本市場・投資環境:2026~2027年にはインフレ抑制が進み、FRB金利も中立水準に下がると予測されています。これにより住宅ローン金利は5%台に下がり、商業用不動産のキャップレート圧力も緩和されます。投資活動は融資環境の改善により活発化し、パンデミックで遠ざかっていた海外投資家も再びDCに戻る可能性が高まります(DCは海外資本の安定投資先であり、円安が進めばオフィス再生投資や高級住宅投資が再燃も)。開発投資についても金利低下で2027年頃から再開が期待され、ポトマック川沿いやNortheast地区での大型複合開発も動き出すかもしれません。ただし、2026年までにアパート賃料の上昇が鈍化すれば、開発業者の慎重姿勢も続きます。
- 政策の影響:2026年のDC市長選(指導層交代があれば)で開発政策が変わる可能性もあるものの、歴史的にDCは開発推進・住宅供給重視の姿勢を堅持しています。引き続き3万6千戸新規住宅(2025年目標、完全達成は難しいものの進展あり)に向けゾーニング改革(アクセサリードウェリングの解禁や一部地区での高密度化)やインセンティブ施策の強化、インクルージョナリーゾーニング(新規プロジェクトでの低所得枠義務強化など)の見直しなどが進められるでしょう。商業分野では空オフィスの新用途(コワーキング施設や行政仮設活用など)も提案され、連邦政策の後押し(困っている都市向けオフィス転用助成策など)が通ればダウンタウン復活の加速が期待されます。
これらは各関係者にとって何を意味するのか?
- 住宅購入者(2025〜2028年): 2021年のような熱狂的な競争状況よりは競争が落ち着くことが予想されますが、価格の下落は期待しないほうがよいでしょう。むしろ、安定した緩やかな上昇が見込まれます。今後数年は実は良いタイミングかもしれません。金利が最近の高水準から下がる可能性があり、在庫も増えて選択肢が広がるでしょう。2028年には現状より購入価格が上がるかもしれません(ただし金利は下がる可能性あり)。つまり、2020年代半ばに購入すれば借り換えチャンスや価格上昇の両方の恩恵を受けられるかもしれません。エリア選びが重要です。成長余地のある地域(開発計画や学校改善地域など)で購入すれば資産価値の上昇が期待できます。一方で流行のピークマーケットでの購入はインフレ程度のリターンにとどまる可能性があります。
- 住宅所有者: DCで資産を保有している方は、毎年着実に資産価値が増加する可能性が高いでしょう。売却を検討している場合、今後数年は金利低下や在庫拡大で買い手が増える可能性があり、売却の好機となるかもしれません。ただし在庫回復が進めば買い手に選択肢が増えるため、売り手は適正価格での設定や差別化のためのリフォーム投資が必要になるでしょう。“いくらでも売れる”時代は終わり、特に人気サブマーケット以外では適正な戦略が不可欠です。
- 投資家: 短期的にはより好条件での購入環境(オフィスの値下がり、住宅分野の一部での価格軟化)に備え、2020年代後半に収益回収のチャンスを探しましょう。賃貸物件の投資家は家賃や物件価値の上昇が見込めるため、保有の価値がありますが、現在の高いファイナンスコストに注意が必要です。共同投資やクリエイティブな資金調達も検討しましょう。フリッパーやデベロッパーは、超高級物件よりも需要の高まる入門用住宅や中堅コンドミニアムなど“待ち望まれている分野”に絞るべきです。また、政策面の調査は不可欠です。例えば、古いアパートビル購入の場合、DCが今後家賃規制を拡大する動きがあるため、そのリスクも加味しましょう。
- 商業プレイヤー: 2025〜2026年にオフィスのコンバージョンや用途転換に踏み切ることで、2028年には安定した資産として大きなリターンを得られる可能性があります(例:空室オフィスを$100/平方フィートで購入し、$200/平方フィートかけてアパートに転換、2028年には$400/平方フィートのクラスBアパートとして評価される——もし都心部が回復すれば現実的な話です)。一方で、構造変化を無視して“市況回復待ち”のまま魅力のないオフィス物件を持ち続けるのは価値を損なうリスクがあります。コロナ前の水準に市場が完全に戻らない可能性も考慮が必要です。
結論として、2026〜2028年のDC不動産市場の見通しは「慎重な楽観」です。価格や家賃は急騰ではなく穏やかに上昇し、経済の基礎的要因により近い動きをするでしょう。市場は(パンデミック混乱などの)特別な時期から、歴史的に見られた低ボラティリティ・安定成長の通常運転に戻りつつあります。DCは依然として人気が高く供給が限定的な市場であり、強い雇用基盤が長期的な魅力を支えています。DCの今後を一言で表すならば、「ゆっくりでも着実な成長が勝利の鍵」と言えるでしょう。長期視点で質の高いロケーションと堅実な基礎条件に注目する投資家・購入者は、2025〜2028年のDC不動産で堅実なリターン(劇的ではないものの)が期待できそうです。特に都心再生が本格始動した場合や、政府による住宅支援など重要な政策が打ち出されればさらなる上振れリスクも秘めています。反対に政策変更や外的ショックには警戒が必要ですが、DCは多くのサイクルを通して強靭さを発揮してきました。今後数年は市場の再均衡と新たな機会の時期となるでしょう。